古文の解き方や勉強法、参考書や問題集の紹介(第3回)「接続助詞『ば』『を』『に』」
皆さんこんにちは。七隈国英塾の杉久保です。
今回は「接続助詞『ば』『を』『に』」を解説して聞きます。
主語が変わったり、逆接や順接などの接続語の働きをするので、助詞の中で最も重要です。
それでは、七隈国英塾の作法にのっとり今回の要点を3行でまとめます。
①接続助詞「ば」「を」「に」(「が」「とも」「ど・ども」)で主語が変わる可能性がある
②順接仮定(確定)条件「ば」、逆接過程条件「とも」、逆接確定条件「ど、ども」で主語が変わる可能性がある
③主語が変わらない接続助詞「て」「で」「つつ」「ながら」
★現代文、古文、英語の勉強法をまとめた記事はこちら★
国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介
前回:古文(第2回)「格助詞『が』『を』『に』」
次回:古文(第4回)「敬語、給ふ、参る、奉る」
(第10回)「主語が変わる助詞『を、に、ば、ば、ども、が、とも、を、に(鬼婆どもが友鬼)』変わらない助詞『て、で、して、つつ、ながら』」
「主語が変わる助詞」は、「主語を補うのに重要な単元」です。第10回の「主語が変わる助詞」と第4回の「敬語」の2つを押さえれば、主語を補うための条件は満たせます。
「鬼婆ストップ」の練習を10回繰り返せば、必ず主語が取れるようになりますので、ぜひやって下さいね。
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1.接続助詞「ば」「を」「に」(「が」「とも」「ど・ども」)で主語が変わる
そもそも接続助詞とは
古文では接続詞、逆接(対比の接続)「しかし」、順接(因果の接続)「したがって」、単純接続(つなぐだけ)「~して」などを使いません。その代わりに、接続助詞「ば」「を」「に」「が」「とも」「ど・ども」「て」「で」「つつ」「ながら」などで済ませます。
★逆接・順接。単純接続をまとめた記事はこちら★
現代文(第3回)論説文の読み方①接続語
接続助詞の後ろには読点「、」がつき、文と文をつなぐ働きをしているのです。
現代語のように「しかし」「したがって」などの接続詞はなく、簡単な接続助詞で済ましていまうのが、古文読解が難しい原因の1つです。
中でも接続助詞「を」「に」がつらいです。
①順接、逆接、単純接続のどれかが入るので、前の文と後ろの文を見て適切な接続詞を補って読む必要があります。
②格助詞「を」「に」と混同しやすいです。格助詞「を」「に」はぞのまま「を」「に」と訳します。
③主語が変わる可能性があります。
特に「に」がつらいです。7つの品詞の可能性があり識別する必要があります。詳しくは第7回「識別③、『に』の識別」でやる予定です。
接続助詞は12種類あります。
主語が変わる「ば」「を」「に」「が」「とも」「ど・ども」「ものを・ものの・ものから・ものゆゑ」の8種。
主語が変わらない「て」「で」「つつ」「ながら」の4種。
まず最初は、
接続助詞「ば」「を」「に」で主語が変わる可能性があり、
接続助詞「て」「で」で主語関わらない。
と覚えましょう。
接続助詞「ば」「を」「に」で主語が変わる可能性がある(最重要)
接続助詞「ば」「を」「に」で主語が変わる可能性があります。
「ば」については次の章でやります。今回は問題を解くことで、接続助詞「を」「に」をつかって接続詞を補ったり、主語を補ったりする練習をしましょう。
問題「主語と接続詞を補って読みましょう」
①あやしがりて見るに、筒の中光たり。(あやし=不思議)
②(青々とした築山を)人はことに目もとどめぬを、あはれとながむるほどに、(ぬ=打消)
③(姉さん達が源氏物語を)語るを聞くに、いとどゆかしさまされど、(ゆかし=読みたい)
正解
①(お爺さんが)不思議がってみると、竹の筒の中が光った。(単純接続)’
②人は(築山)に特に目を留めないけど、(私は)感慨深くぼーとみていた時に、(逆接)
②姉さん達が物語のことを語るのを(私は)聞いたので、(私は)ますます物語が読みたくなったけど、(順接)
①は竹取物語の冒頭です。おじいさんが竹を見ることと、竹が光ることには因果関係はありません。よって、単純接続となります(順接「~ので」とよく間違えます)。
②は和泉式部日記の一節です。「他の人は築山を見ない」「私は築山をぼーっと見る」2つの文は逆なので、逆接となります。ちなみに、最後の「に」は格助詞の「に」です。
③は更級日記の冒頭です。「私が物語の話を聞く」「私は物語を読みたくなる」には因果関係があります。よって、順接となります。また、前の文と後ろの文で主語が変わっていません。
要点は2つ
格助詞「を」「に」は逆接、順接、単純接続のどれかを補って読もう。
格助詞「を」「に」で主語が変わったり、変わらなかったりする。
接続助詞「が」「とも」「ど・ども」「ものを」で主語が変わる可能性がある(あまり重要ではない)
接続助詞「が」「とも」「ど・ども」で主語が変わる可能性があります。しかし、あまり重要ではありません。
なぜならば、
①「が」「とも」「ど・ども」「ものの」の意味は逆接のみ。
②現代語と意味がほとんど変わらない。
③なので、皆さんは主語を補えている。
からです。
主語を補うという点からみると、接続助詞「が」「とも」「ども」「ものを」は、あまり重要ではありません。
しかし、「とも」「ど・ども」は逆接仮定条件、逆接確定条件という重要な意味がありますので、次の章で詳しく説明していきます。
今回は接続助詞「が」を補足して終わります。要点は4つ
①意味は逆接である。(逆接=逆接確定条件と覚えよう)
②主語が変わる可能性があるが、現代語と同じなので考えなくても主語を補える。
③格助詞「が」と混同しやすい。
④平安末期以降の用法である。平安中期の文章(源氏、枕草子など)には出ない。
★格助詞をまとめた記事はこちら★
古文(第2回)「格助詞『が』『を』『に』」
④の平安末期以降の用法であることを知っておくと役に立ちます。
補足として、単純に「逆接」といわれたら「逆接確定条件」のことを指します。一応覚えておきましょう。
この章をまとめ
・接続助詞の後ろには読点「、」がつき、文と文をつなぐ働きをしている。
・現代語のように「しかし」「したがって」などの接続詞はなく、簡単な接続助詞で済ましていまうのが、古文読解が難しい原因の1つ。
・接続助詞「ば」「を」「に」で主語が変わる可能性がある(最重要)。
・接続助詞「て」「で」で主語は変わらない。
・接続助詞「を」「に」は、逆接、順接、単純接続のどれか。(最重要)
・「が」「とも」「ど・ども」でも主語が変わる可能性があるが、重要ではない。
2.順接仮定条件「ば」、順接確定条件「ば」、逆接仮定条件「とも」、逆接確定条件「ど、ども」で主語が変わる可能性がある
4つの~条件は例文で理解しよう
接続助詞「ば」「ば」「とも」「ど・ども」の4つの違いは、文脈把握や問題の正答率をあげるのに、ものすごく重要です。
分かりにくいと思いますので、例文で覚えましょう。
まず基本から
①未然形+「ば」順接仮定条件「もし~したならば」。
②已然形+「ば」順接確定条件「(実際に)~したので」。
③終止形+「とも」順接仮定条件「たとえ~したとしても」。
④已然形+「ど・ども」逆接確定条件「(実際に)~したけれど」。
例文「主語を補って読みましょう」(このとおりに覚えましょう)
①呼ばば、来る。
②呼べば、来る。
③呼ぶとも、来ず。
④呼べど、来ず。(=呼べども、来ず)。
正解
①もし呼んだとしたら、来るだろう(順接仮定条件)
②呼んだので、来た(順接確定条件)
③もし呼んだとしても、来ないだろう(逆接仮定条件)
④読んだけど、来てくれなかった(逆接確定条件)
4つの例文はすべて主語が変わっています。
「ば」「ば」「とも」「ど・ども」で主語が変わる可能性があるのです。
仮定条件は「まだやってない」、確定条件は「すでにやった」
仮定条件と確定条件の違いはものすごく重要です。
「仮定条件」と「確定条件」の違いは「否定」と「肯定」の違いだからです。
仮定条件は「もし~」という仮定の話をしています。まだやっていないので否定なのです。
確定条件は「(実際に)~」という確定した話をしています。もうやっているので肯定なのです。
要するに「やっていない」のか「やった」のかの違いなのです。否定か肯定かの違いなので、文章の意味が逆になってしまいます。
特に気をつけなければいけないのは格助詞「ば」です。
①未然形+「ば」順接仮定条件「もし~したならば」。
②已然形+「ば」順接確定条件「(実際に)~したので」。
①ならば「まだやってない」、②ならば「もうやった」という意味になるので、正誤問題でかものすごく聞かれます。できていない人は必ず例文を覚えて、接続助詞「ば」の接続を確認しましょう。
もちろん、文脈を読み取るのにもとても重要です。演習をやるときは意識して、接続助詞「ば」の接続を確認しましょう。
未然形・已然形の意味とは
①未然形+「ば」順接仮定条件「もし~したならば」。
②已然形+「ば」順接確定条件「(実際に)~したので」。
③終止形+「とも」順接仮定条件「たとえ~したとしても」(例外)。
④已然形+「ど・ども」逆接確定条件「(実際に)~したけれど」。
この基本を見てみると、未然形=仮定条件、已然形=確定条件となっています(終止形+「とも」は例外)。
そもそも、未然形とは「未(いま)だ存在しない形」、已然形とは「已(すで)に存在している形」という意味です(「然」は存在するという意味です。たとえば「自然」など)。
なので、
未然形+「ば」で順接仮定条件
已然形+「ば」で順接確定条件
已然形+「ど・ども」で逆接確定条件
になるのです。
終止形+「とも」逆接仮定条件は例外ですので、例文を覚える必要があるのです。
例文(苦手な人はぜひ覚えましょう)
①呼ばば、来る。
②呼べば、来る。
③呼ぶとも、来ず。
④呼べど、来ず。(=呼べども、来ず)。
この章をまとめ
・4つの~条件は例文で覚えよう
・「ば」「ば」「とも」「ど・ども」で主語が変わる可能性がある
・仮定条件は「もし~」、「まだやっていない」ので否定
・確定条件は「(実際に)~」、「もうやっている」ので肯定
・「仮定条件」と「確定条件」の違いは「否定」と「肯定」(最重要)
・未然形とは「未だ存在しない形」、已然形とは「已に存在している形」
3.主語が変わらない接続助詞「て」「で」「つつ」「ながら」
接続助詞「て」「で」では主語が変わらない
接続助詞「て」は単純接続で「~して」と訳します。
接続助詞「で」は打消しの単純接続で「~しないで」と訳します。
接続助詞「て」「で」では主語が変わらないことが重要です。
「て」と似たものに接続助詞「して」もあります。形容詞・形容動詞、助動詞「ず」の連用形に接続します。「て」の接続と同じですね。
ちなみに
「て」の接続は連用形
「で」の接続は未然形
です。
知らない生徒さんがいると困るので解説すると、
読点「、」の接続は連用形 (読点 とうてん)
句点「。」の接続はもちろん終止形
読点「、」の接続は連用形を知らない生徒さんが多いです。接続助詞「て」の接続は、読点「、」と同じ連用形です。今覚えましょう。
接続助詞「で」は打消しの意味があるので、未然形(まだ存在してない形)がつくのは理解できると思います。分からなかった人は前の章のまとめを見ましょう。
主語が変わらない格助詞「つつ」「ながら」は意味も大事
よく出題されるのは「ながら」です。意味が多いので文脈判断しましょう。
接続助詞「つつ」「ながら」は主語が変わらないということも重要です
接続助詞「つつ」動作の反復や継続、同時並行(ながら)
接続助詞「ながら」同時並行(ながら)、状態の継続(~のまま)、逆接(~けれど)
例文
①勉強をしつつ、日々を送る(動作の反復や継続)
②食パンを食べつつ、登校する(同時並行)
③食パンを食べながら、登校する(同時並行)
④昔ながらの良い風景(状態の維持)
⑤藤井聡太さんは14歳ながら、将棋のプロになった(逆接)
接続助詞「ながら」には逆接の意味があることは特に注意しましょう。
この章のまとめ
・接続助詞「て」「で」「つつ」「ながら」では主語が変わらない
・「て」の接続は連用形、「で」の接続は未然形
・読点「、」の接続は連用形、句点「。」の接続はもちろん終止形
・接続助詞「ながら」には逆接の意味がある。
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国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介
前回:古文(第2回)「格助詞『が』『を』『に』」
次回:古文(第4回)「敬語、給ふ、参る、奉る」
以上で、第3回「接続助詞『ば』『を』『に』」は終わりです。
ご精読ありがとうございました。
今回取り扱った接続助詞は前回やった格助詞とものすごく混同しやすいです。第2回「格助詞『が』『を』『に』」を復習するといいと思います。
次回は第4回「敬語、給ふ、参る、奉る」にする予定ですので、よろしければ、次回も読んでいただけるとありがたいです。