古文の解き方や勉強法、参考書や問題集の紹介(第9回)「助動詞②推量系助動詞の意味・確述用法・撥音便の解説」

皆さんこんにちは。七隈国英塾の杉久保です。

今回は(第9回)「助動詞②推量系助動詞を解説していきます。

推量系助動詞」11種類です
終止・ラ変の連体形接続「べし・まじ・らむめり・らし・なり
未然形接続・むず・じ・まし

連用形接続「けむ」

推量系助動詞は、助動詞の中でも意味を覚えるのが大変ですが、この章を読めば確実に覚えられます。
また推量系助動詞は、「確述用法」や「撥音便」(はつおんびん)文法でよく使われます。
確述用法」と「撥音便」の概要は下に書きますので目を通しておいて下さい。

確述用法「つ・ぬ」完了→強意「きっと」)
・な・つらむ・ぬらむ・つべし・ぬべし・てまし・なまし
撥音便「る→ん→省略」
あるべし→あんべし→あべし
「あるめり→あんめり→あめり
「あるなり→あんなり→あなり

それでは、七隈国英塾の作法にのっとり今回の要点を3行でまとめます。

①「む(むず)、じ、まし、べし、まじ、らむ、けむ、めり、らし、なり」の意味を覚えよう
確述用法「てむ・なむ・つらむ・ぬらむ・つべし・ぬべし・てまし・なまし
③「なむ」「なり」の識別の復習

★現代文、古文、英語の勉強法をまとめた記事はこちら★
国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介

前回:古文(第8回)「助動詞①まず接続・活用を覚えよう」
次回:古文(第10回)「主語が変わる助詞『を、に、ば、ば、ども、が、とも、を、に(鬼婆どもが友鬼)』変わらない助詞『て、で、して、つつ、ながら』」「助動詞③過去完了系助動詞」

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1.「む(むず)、じ、まし、べし、まじ、らむ、けむ、めり、らし、なり」の意味を覚えよう

推量系助動詞の基本「む」は「スイカ止めて+婉曲」

「スイカ止めて」る「ような」人が好き

「む」の7つの意味スイカ止めて+婉曲」
「推量」(~だろう)
「意志」(~したい)
「可能」(~できる)
「当然」(~しなければならない)
「命令」(~しなさい)
「適当」(~したほうがいい)
婉曲(えんきょく)(~のような) む」+体言のとき、「~のような体言」
体言=名詞(花、鉛筆、手紙)

婉曲「回りくどい」の意味
「私はあなたが好きです」→直接的なものの言い方。
「私はあなたのような人が好きよ」→婉曲的なものの言い方

婉曲「む」+体言。使用頻度がとても高く、「む」の50%は「婉曲」の意味で用いられている印象。次に多いのが「推量・意志」で45%。残りの5%は「可能・当然・命令・適当」

補足「当然」と「適当」の違いについて

当然=葬式の服装(~しなければならない)
適当=結婚式の服装(~したほうがいい)


葬式にはい服・いネクタイを「着なければならない」です。
結婚式には白と黒でない明るい服なら大丈夫です。(白は主役のための色)
Q「黄色、ピンク、赤色、どのドレスがいいかしら?」
A「ピンクにしたほうがいいんじゃない?」

「まじ」⇔「べし」≒「む・むず」⇔「じ」は図で覚えよう

「まじ」⇔「べし」≒「む・むず」⇔「じ」

「まじ」⇔「べし」≒「む・むず」⇔「じ」

「む」=「スイカ止めて+婉曲」の7つ
「むず」=「スイカ止めて+婉曲」の7つ(打消しではないことに注意)
「じ」「打消し推量」と「打消し意志」の2つだけ
未然形接続の助動詞「る・らる・す・さす・しむ・ず・じ・む・むず・まし・まほし」

「べし」=「スイカ止めて」の6つ婉曲が無い
「まじ」打消しのスイカ止めて」の6つ婉曲が無い
終止形・ラ体接続の助動詞べし・まじ・らむ・めり・らし・なり」

「む」と「むず」は100%同じと覚えても大丈夫です。
「む」と「べし」の違いは「婉曲」が有るか無いだけです

未来「む・むず」「じ」、現在「らむ」、過去「けむ」

未来「む・むず」「じ」、現在「らむ」、過去「けむ」

「む・むず」スイカ止めて婉曲
「じ」 not スイ

「らむ」現在推量(~しているだろう)現在婉曲(~しているような)
「けむ」過去推量(~していただろう)現在婉曲(~していたような)
「らむ」+体言、「けむ」+体言のときは婉曲になる。

「らむ」は「らし」と「む」の子ども。終止形・ラ体接続の助動詞
「けむ」は「けり」(過去)と「む」の子ども。だから、連用形接続の助動詞
連用形接続の助動詞「き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし」
「き・けり」過去、「つ・ぬ・たり」完了、「たし」願望

補足「婉曲」は、「む・むず」・「らむ」・「けむ」・「めり」(推定)の5つだけ

「む」スイカ止めて+婉曲
②「むず」スイカ止めて+婉曲
③「らむ」現在推量・現在婉曲
④「けむ」過去推量・過去婉曲
⑤「めり」推定(~のようだ)・婉曲(~のような


「めり」は「~ようだ」「~ような」で覚えやすい。

推定系助動詞「めり」=目、「らし」=耳、「なり」=「うわさ」

推定助動詞「めり・らし・なり」には根拠がある

「めり」視覚推定(~のようだ)、婉曲(~ような)「ようだ、ような」で覚えよう
「らし」聴覚推定(~らしい)
「なり」伝聞推定(~という噂の)


「めり」視覚情報からの推定(目り)で覚えよう
「教室に入ると、隣の席のA君の席が空いていた
「Aくんは休みのようだ

「らし」聴覚情報からの推定
「朝目覚めると、台所からトントンと大根を切る音が聞こえる
「朝ごはんは味噌汁らしい

「なり」からの推定(伝聞推定)(鳴り)で覚えよう
奥山に猫又といふものがありて、人を食らふなり
奥山に猫又という化け猫がいて、人を食べるという噂だ。・

終止形・ラ体接続の助動詞べし・まじ・らむ・めりらしなり

「まし」は反実仮想

反実仮想「まし」の頻出4パターン

「もし~だったら、~だったろう」
、~まし。
②~、~まし。
③~ませ、~まし。
④~ましか、~まし。


①「~ば」は未然形接続の「ば」順接仮定条件の接続助詞「ば」
②「~せば」の「せ」は過去の助動詞「き」の未然形知らないとまず間違えます。
③「~ませば」のませ」は反実仮想の助動詞「まし」の未然形。
④「~ましかば」のましか」は反実仮想の助動詞「まし」の未然形。

接続助詞「ば」「ば」「とも」「ど・ども」

未然形+「ば」順接仮定条件「もし~したならば」。
已然形+「ば」順接確定条件「(実際に)~したので」。
終止形+「とも」順接仮定条件「たとえ~したとしても」。
已然形+「ど・ども」逆接確定条件「(実際に)~したけれど」。

接続助詞「ば」「ば」「とも」「ど・ども」主語が変わる可能性があることにも注意。

まし
未然(ず)ましか
ませ
連用(て)
終止(。)まし
連体(とき)まし
已然(ど)しかましか
命令

★接続助詞で「主語の補い方」を勉強したい方はこちら★
古文(第3回)「接続助詞『ば』『を』『に』」

この章をまとめ
・「む」は「スイカ止めて+婉曲」
「む」+体言で「婉曲」
「まじ」⇔「べし」≒「む・むず」⇔「じ」
未来「む・むず」「じ」、現在「らむ」、過去「けむ」
「婉曲」持ちは5つ。「む・むず」・「らむ」・「けむ」・「めり」
・推定助動詞「めり」=目、「らし」=耳、「なり」=うわさ
「~せば、~まし」の「せ」は過去の助動詞「き」の未然形

2.確述用法「てむ・なむ・つらむ・ぬらむ・つべし・ぬべし・てまし・なまし」

「確述用法」とは、完了「つ・ぬ」の下に推量系助動詞が来た時に「完了→強意(きっと)」となる用法

8つの確述用法

確述用法『完了』「つ・ぬ」が『強意』に変身する用法

完了の助動詞「つ・ぬ」は後ろに「推量系助動詞」がつくと、強意「きっと」に変化する。これを「確述用法」という。「確実に述べる」から「きっと」という訳になる。

連用形接続するのが特徴で、連用形+「なむ」の確述用法は特に要注意(「なむ」の識別の1つ)。
連用形接続の助動詞「き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし」の「つ・ぬ」の完了の意味が強意になるので、確述用法の接続は「連用形」になる。

てむなむつらむぬらむつべしぬべしてましなまし」は必ず暗記しよう。

未然形接続の助動詞「る・らる・す・さす・しむ・ず・じ・・むず・まし・まほし」の「む」「まし」の上にある「つ・ぬ」は、未然形の「て・な」になるので、「てむ・なむ・てまし・なまし」になる。
終止形・ラ体接続の助動詞「べし・まじ・らむ・めり・らし・なり」の「らむ」「べし」の上にある「つ・ぬ」は、終止形の「つ・ぬ」になるので、「つらむ・ぬらむ・つべし・ぬべし」になる。

「強意」+「推量系助動詞」の「強意」は「きっと」と訳をする。
「推量系助動詞」の部分は文脈で当てはめていかなければならない。

花咲きなむ。「花がきっと咲くだろう」
花咲きぬらむ。「花がきっと咲いているだろう」
花咲きぬべし。「花がきっと咲くだろう」
花咲きなまし。「花がきっと咲くだろう」

未然(ず)
連用(て)
終止(。)
連体(とき)つるぬる
已然(ど)つれぬれ
命令てよ

練習問題で「確述用法」の識別をしてみよう

問題「『確述用法』に注意して訳しましょう」(確述用法でないものも含まれます)

①花咲きなむ
②花咲きつらむ
③花咲きつらむ
④花咲かなむ
⑤花なむ咲く。
⑥酔いて入りたまひなむとす。
⑦恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ。難問

ヒント「なむ」の識別(4択)

未然形+「なむ」、他者に対する願望の終助詞「~してほしい」
連用形+「なむ」、完了「ぬ」の未然形「な」+スイカ止めて婉曲「む」(確述術用法
③体言、様々な語+「なむ」、係助詞「なむ」
ナ変動詞「死ぬ」「去ぬ」「往ぬ」の未然形の活用語尾+スイカ止めて婉曲「む」

解答
①「花がきっと咲くだろう。」
確述用法「なむ」(強意)+(推量)

②「花がきっと咲いているだろう
確述用法「つらむ」(強意)+(現在推量)

③「花がきっと咲いているような時
確述用法「つらむ」(強意)+(現在婉曲)

④「花よ咲いてほしい
他者に対する願望の終助詞「なむ」

⑤「花が咲く」係助詞「なむ」

⑥酔ってきっと(部屋に)お入りになさろうとする
確述用法「なむ」(強意)+(意志)

⑦恋にきっと朽ち果てるような名が惜しいなあ。
確述用法「なむ」(強意)+(婉曲)

解説
①花咲きなむ
「花がきっと咲くだろう。」
「咲き」は四段動詞「咲く」の連用形。連用形に接続する「なむ」は確述用法の「な+む」。「な」は強意の意味になるので「きっと」と訳し、「む」は「スイカ止めて+婉曲」のどれかを文脈判断して「だろう」推量で訳をする。

②花咲きつらむ
「花がきっと咲いているだろう
つらむ」確述用法「てむ・なむ・つらむ・ぬらむ・つべし・ぬべし・てまし・なまし」の「つらむ」。「つ」を強意「きっと」と訳し、「らむ」は現在推量・現在婉曲のうちどっちかである。下に体言が無いので「しているだろう」現在推量で訳をする。

③花咲きつらむ
「花がきっと咲いているような
今回のように「らむ」の下に体言「時」がある場合は、「しているような」現在婉曲で訳をしなければならない。

③花咲かなむ
「花よ咲いてほしい
「咲か」は四段動詞「咲く」の未然形未然形に接続する「なむ」は他者に対する願望の終助詞の「なむ」。「~してほしい」と訳す。

④花なむ咲く
「花が咲く」
「花」は体言。体言や様々な語に接続する「なむ」は係助詞の「なむ」。ちなみに「咲く」は句点「。」に接続しているので終止形に見えるが、実は連体形
補足「係助詞」
「ぞ・なむ・や・か」→連体形
「こそ」→已然形


⑤酔いて入りたまひなむとす。
「酔ってきっと(部屋に)お入りになろうとする」
「給ひ」は四段動詞「給ふ」の連用形連用形に接続する「なむ」は確述用法の「な+む」。「な」は強意の意味になるので「きっと」と訳し、「む」は「スイカ止めて+婉曲」のどれかを文脈判断して「~しよう」意志で訳をする。
補足
「給ふ」は四段活用で尊敬「お与えになる・~しなさる」
「給ふ」は下二段活用で謙譲「~し申し上げる」

「給ふ」四段「給は・給ひ・給ふ・給ふ・給へ・給へ」
「給ふ」下二「給へ・給へ・×・給ふる・給ふれ・給へよ」

⑥恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ難問
「恋にきっと朽ち果てるような名が惜しいなあ」
「朽ち」は上二段動詞「朽つ」の未然形か連用形。終助詞は文末にくるので終助詞「なむ」ではない。また終助詞と確述用法の訳を入れてみると、確述用法の訳がうまくいくので、今回は確述用法の「なむ」。「な」は強意「きっと」で訳し、後ろに体言「名」があるので、「む」は婉曲ような」になる
補足
「き」自分の過去
「けり」他人の過去・詠嘆(~なあ)

「けり」の「詠嘆」が用いられるのは以下の2つの場合
①「和歌の中」
②「自分が主語なのに他者過去『けり』を用いた時
「昔は物を思はざりけり
「(私は)若いころは物事を深く考えなかったなあ
「き」「けり」でも主語は補えるので、注意しながら読んでいこう。

★「給ふ」の識別をもっと勉強したい方はこちら★
第4回「敬語『給ふ』『参る』『奉る』」

この章をまとめ
「確述用法」、完了「つ・ぬ」の下に推量系助動詞が来た時に「完了→強意(きっと)」
・「てむ、なむ、つらむ、ぬらむ、つべし、ぬべし、てまし、なまし」は必ず暗記
・「なむ」の識別(4択)

未然形+「なむ」、他者に対する願望の終助詞「~してほしい」
②連用形+「なむ」、完了「ぬ」の未然形「な」+スイカ止めて婉曲「む」(確述術用法)
③体言、様々な語+「なむ」、係助詞「なむ」
④ナ変動詞「死ぬ」「去ぬ」「往ぬ」の未然形の活用語尾+スイカ止めて婉曲「む」

3.「撥音便」の「べし」「めり」「なり」

「撥音便」になる「べし」「めり」「なり」は推量系助動詞

「撥音便」(はつおんびん)
「撥音」=「ん」のこと。「る」→「ん」→「省略」と変化する。
推量系助動詞「べし」「めり」「なり」で撥音便になることを暗記しよう。
終止形・ラ体接続助動詞「べし・まじ・らむ・めり・らし・なり

撥音便「る→ん→省略」
あるべし→あんべし→あべし」
「あるめり→あんめり→あめり」
「あるなり→あんなり→あなり」

イ音便・ウ音便・促音便もあるが、受験に出るのは「撥音便」
撥音便化する「べし」「めり」「なり」(〇伝聞推定、×断定)を押さえとけば大丈夫です。

「撥音便化する『なり』」は伝聞推定の「なり」。断定の「なり」ではない

問題「以下の文を訳しましょう」

①「奈良に東大寺はあるなり」
②「奈良に東大寺はあんなり」
③「奈良に東大寺はあなり」

ヒント「なり」の識別(2択)

終止形・ラ変の連体形+「なり」伝聞推定の助動詞「なり」(~という噂)
体言・連体形+「なり」断定の助動詞「なり(~のだ)

男もなる日記というものを、女の私もするなり
「男もするという噂の日記というものを、女の私もするのだ
サ変「せ・し・する・すれ・せよ」

上が「四段・ラ変」の時は識別不可。文脈で判断しよう。

正解
①「奈良に東大寺はあるのだ」(断定)
①「奈良に東大寺はあるという噂だ」(伝聞推定)

両方正解

②「奈良に東大寺はあるという噂だ」(伝聞推定)
「奈良に東大寺はあるという噂だ」(伝聞推定)

解説
①「奈良に東大寺はあるなり」
「奈良に東大寺はあるのだ」(断定)
「奈良に東大寺はあるという噂だ」(伝聞推定)

「ある」はラ変動詞「あり」の連体形。四段・ラ変動詞の時「なり」の識別はできないので、文脈判断になる。今回は文章が短すぎるので識別不可。だから両方正解。

②「奈良に東大寺はあんなり」
③「奈良に東大寺はなり」
「奈良に東大寺はあるという噂だ」(伝聞推定)
②③ともに「撥音便」化しているので、「なり」は伝聞推定の「なり
「撥音便化」している「なり」は100%伝聞推定の「なり」ということは覚えましょう。

練習問題で「撥音便」の訳をやってみよう

問題「以下の文を訳しましょう」

①極楽浄土は西方にあべし
②平家にあらずんば人にあらざんめり
③平家にあらずんば人にあらざめり
④扇にはあらで、くらげのななり難問

ヒント
④「扇の骨」(25本くらいある木)に見える物が、クラゲの骨であることに気づいた時のセリフ。
撥音便化する前の文章は「くらげのなるなり」
「なる」と「なり」をちゃんと識別しよう。

「なり」の識別(2択)
終止形・ラ変の連体形+「なり」伝聞推定の助動詞「なり」(~という噂)
体言・連体形+「なり」断定の助動詞「なり」(~のだ)

「撥音便化」している「なり」は100%伝聞推定の「なり」

正解
①「極楽浄土は西方にあるだろう」(推量
②「平家でなければ、人ではないようだ」(推定

「平家でなければ、人ではないようだ」(推定
「扇(の骨)ではなくて、クラゲの骨であるようだ」(断定)+(推定

解説
①極楽浄土は西方にあべし
「極楽浄土は西方にあるだろう」(推量
「あべし」は「あるべし」が撥音便化したもの。「べし」「スイカ止めて+婉曲」を文脈で当てはめていく。今回は「推量」で訳をする。

②平家にあらずんば人にあらざんめり
「平家でなければ、人ではないようだ」(推定
「あらざんめり」は「あらざるめり」が撥音便化したもの。「めり」「推定(ようだ)」「婉曲(ような)」の2択。下に体言が無いので「推定」で訳をする。

③平家にあらずんば人にあらざめり
「平家でなければ、人ではないようだ」(推定
「あらざめり」は「あらざるめり」が撥音便化したもの。撥音便は「る」→「ん」→「省略」のどれか。

④扇にはあらで、くらげのななり難問
「扇(の骨)ではなくて、クラゲの骨であるようだ」(断定)+(推定
「ななり」は「なるなり」を撥音便化したもの。前の「なる」と後ろの「なり」の識別が重要。

後ろの「なり」は、前の「なる」が撥音便化しているので、伝聞推定の「なり」である。今回は「推定(ようだ)」で訳する。

前の「なる」は、接続が格助詞「の」なので難しい。断定の助動詞「なり(~である)」か動詞の「なり(成り)(鳴り)(為り)など」の可能性が考えられるが、断定の助動詞「なり(~である)」で訳すとうまくいくので、断定の「なり」

この章のまとめ
「撥音」=「ん」のこと。「る」→「ん」→「省略」と変化する。
撥音便の「べし」「めり」「なり」
あるべし→あんべし→あべし」
「あるめり→あんめり→あめり」
「あるなり→あんなり→あなり」
「撥音便化」している「なり」は100%伝聞推定の「なり」

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前回:古文(第8回)「助動詞①まず接続・活用を覚えよう」
次回:古文(第10回)「主語が変わる助詞『を、に、ば、ば、ども、が、とも、を、に(鬼婆どもが友鬼)』変わらない助詞『て、で、して、つつ、ながら』」「助動詞③過去完了系助動詞」

以上で、第9回「助動詞②推量系助動詞の意味・確述用法・撥音便の解説」は終わりです。

ご精読ありがとうございました。

今回取り扱った推量系助動詞は「覚えるのが大変な単元」です。練習を繰り返して定着させましょう。基礎力はものすごく重要で、基礎ができていないと必ず途中で停滞します。

次回は第10回「助動詞③過去完了系助動詞」にする予定ですので、よろしければ、次回も読んでいただけるとありがたいです。

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