古文の解き方や勉強法、参考書や問題集の紹介(第4回)「尊敬語・謙譲語?敬語『給ふ』『参る』『奉る』の識別」

皆さんこんにちは。七隈国英塾の杉久保です。

今回は(第4回)「敬語『給ふ』『参る』『奉る』」を解説していきます。

敬語は主語を補うのための最重要な単元です。特に「給ふ」は難しいです。

それでは、七隈国英塾の作法にのっとり今回の要点を3行でまとめます。

①敬語で主語を補う基本、尊敬語、謙譲語、丁寧語
「給ふ」の識別(尊敬語=四段、謙譲語=下二段)
③「参る」「奉る」(尊敬・謙譲)、「候ふ」「侍ふ」(謙譲・丁寧)

★現代文、古文、英語の勉強法をまとめた記事はこちら★
国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介

前回:古文(第3回)「接続助詞『ば』『を』『に』」
次回:古文(第5回)「識別①『つ・ぬ』『る・れ』『なり』」

1.敬語で主語を補う基本、尊敬語、謙譲語、丁寧語

主語を特定するためだけの敬語解説2

尊敬語(お~なる、お~なさる)は、偉い人が何かしたときに使う。主語は偉い人
謙譲語~し申し上げる)は、偉くない人が偉い人に何かしたとき、主語は偉くない人。
敬語無し 偉くない人が何かをしたとき、主語は偉くない人。
敬語無し いままで尊敬語を使っていたのに、とつぜん省くとき、主語は偉い人(例外)
丁寧語(~です、~ます、~ございます)。主語は偉い人、偉くない人のどちらか。

偉い人が2人以上いるときは「~謙尊」の形になる

2人以上偉い人」がいた場合

「他の偉い人」に対して「もう一人の偉い人」が「謙譲語」を使います。

もちろん偉い人には尊敬語をつけるので、

Aさん 
Bさん ~

「Aさん」と「Bさん」は両方偉い人

「謙譲語」と「尊敬語」を同時に使います。

お互いに「~謙尊、」「~謙尊。」で書かれているので、主語の特定は文脈判断になります。古文の中でも平安時代のものが難しいのは、偉い人が複数出てくることが多いからです。

二重尊敬「尊尊」は「とても偉い人(殿上人=三位以上)」のとき使う

二重尊敬(主語はとても偉い人)

①使役・尊敬の助動詞「す・さす」+尊敬の補助動詞「給ふ」
例)「~せ給ふ」「~させ給ふ」
 尊敬+尊敬(二重尊敬
 使役+尊敬
識別が問われることが多い。

本を読ませ給ふ
・「(偉い人が)本をお読みになった」(二重尊敬)(尊敬+尊敬)(95%)
・「(偉い人が下の者に)本を読ませなさった」(使役+尊敬)(5%だから狙い撃ちされる


②尊敬の本動詞+尊敬の補助動詞「給ふ」
例)「おほす」+「給ふ」=「おほせ給ふ」(おっしゃる)
  「御覧ず」+「給ふ」=「御覧じ給ふ」(御覧になる)(見なさる)

補足:とても偉い人がたくさん出てくるとき
「謙尊」+「尊尊」=「謙尊尊」

Aさん「~尊尊
Bさん「~尊尊

「Aさん」「Bさん」は両方とても偉い人(大納言以上)。

「(手紙を)奉らせ給ふ。」みたいなやり取りが繰り返されるので、主語を取るのが大変になる。
平安中期の文章が主語を取るのが大変なのは「とても偉い人がたくさん出てくるから

敬語は20種類くらい。「給ふ」「奉る」「参る」が(尊敬/謙譲)、「侯ふ」「侍ふ」が(謙譲/丁寧)

図1.「尊敬」「謙譲」「丁寧」が被る敬語

覚える敬語は20種類くらいなので覚えましょう。この中で重要なのは
給ふ」「奉る」「参る」「侯ふ」「侍ふ」の5種です。
尊敬・謙譲」と「謙譲・丁寧」の判別が重要になります。

2つの用法がある敬語

尊敬語」と「謙譲語」:「給ふ」「奉る」「参る」の3種


「給ふ」尊敬謙譲
尊敬語「お与えになる」(本動詞)
   「~なさる」(補助動詞
「本を給ふ」→「本をお与えになる」(本動詞)
「本を読み給ふ→「本を読みになる」(補助動詞)

謙譲語「~し申し上げる」(補助動詞のみ)
「本を読み給ふる時」→「本を読み申し上げる時」(補助動詞)

給ふ(尊敬四段活用)  は ひ  ふ  へ  へ
給ふ(謙譲下二段活用) へ へ × ふる ふれ へよ

「給ふ」の「尊敬・謙譲」の識別は「給へ」だけ文法で判断する。
「給+1文字」→尊敬「給+2文字」→謙譲。(マドンナ式識別
「給へば、」の形になった時だけ文脈判断になる。



「奉る」尊敬謙譲
尊敬語「召し上がる」(お食べになる・お飲みになる)(本動詞)
   「お召しになる」(「着る」の尊敬語)(本動詞)
   「お乗りになる」(本動詞)
「御酒たてまつれり」→「お酒をお飲みになった」
「鎧たてまつる」→「鎧をお召しになる」
「御輿奉る」→「乗り物にお乗りになる」

謙譲語「差し上げる」(本動詞)
   「~し申しあげる」(補助動詞)
「手紙を奉る」→「手紙を差し上げる」
「御酒たてまつれり」→「お酒を差し上げた」(尊・謙は文脈判断
「鎧たてまつる」→「鎧を差し上げる」(尊・謙は文脈判断
「御輿奉る」→「乗り物を差し上げる」
「仕え奉る」→「お仕え申しあげる」(補助動詞)

奉る(尊敬・謙譲。ラ行四段活用)ら り る る れ れ



「参る」尊敬謙譲
尊敬語「召し上がる」(お食べになる・お飲みになる)(本動詞)
   「お召しになる」(「着る」の尊敬語)(本動詞)
「御酒まいる」→「お酒をお飲みになった」
「鎧まいる」→「鎧をお召しになる」

謙譲語「参上する」「さしあげる」(本動詞)
「神社に参る」→「神社に参上する」
「御酒まいる」→「お酒を差し上げる」(尊・謙は文脈判断

参る(尊敬・謙譲。ラ行四段活用)ら り る る れ れ

2つの用法がある敬語

謙譲語」と「丁寧語」:「侯ふ」「侍ふ」の2種

「侯ふ(さぶらふ)・侍ふ(さぶらふ)」謙譲語「お仕え申し上げる」(本動詞)
「侯ふ・侍ふ」丁寧語「~です、~ます」(補助動詞)

「天皇に侍ふ」→「天皇にお仕え申しあげる」(「お侍さん=武士」の語源)(本動詞)
「この国を今一度せんたくいたし候ふ。」
→「この国を今一度洗濯したいです。」坂本龍馬の手紙が出典です

補足本動詞」と「補助動詞」の違い

「本動詞」→それ自体に意味がある語。
「補助動詞」→本動詞にくっついて、尊敬「~なさる」や謙譲「~し申し上げる」の意味を追加します。

練習問題「『本動詞』『補助動詞』の違いを気にしながら以下の文を訳しましょう」

例文
①本を給ふ。
②本を読み給ふ。
③本を読み給ふるとき、





ヒント         
給ふ(尊敬四段活用)  は ひ ふ ふ  へ  へ
給ふ(謙譲下二段活用) へ へ × ふる ふれ へよ





正解
①「本をお与えになる尊敬本動詞「お与えになる」
②「本をお読みになる尊敬補助動詞「~になる」
③「本を読み申し上げるとき」謙譲補助動詞「~し申し上げる」

活用がサ変の「おはす」「奏す」「啓す」。一般動詞がある「聞こゆ」

活用に気を付けるのはサ変の「おはす」「奏す」「啓す」の3種。

「おはす」尊敬語「いらっしゃる」
「奏す」謙譲語「(天皇・上皇に」申し上げる」
「啓す」謙譲語「(中宮・皇太子に)申し上げる」

サ変活用をします。
おはせ(ず)、おはし(て)、おはす(。)おはする(とき)、おはすれ(ど)、おはせよ

上皇は「院」中宮・皇太子は「宮」と古文では表します。だだし、「宮」は皇太子以外の天皇の子どもや孫にも使います「東宮」ならば間違いなく皇太子になります。

一般動詞の用法もあるのが「聞こゆ」です。

聞こゆ」謙譲語「申し上げる」
「聞こゆ」一般動詞「評判になる」「聞こえる」

「聞こゆ」意味を聞く問題が頻出ですので、謙譲語「申し上げる」、一般動詞「評判になる」は必ず覚えましょう。

この章をまとめ
尊敬語は主語が偉い人。
謙譲語は主語が偉くない人
敬語無しは主語が偉くない人。
丁寧語は主語が偉い人か、偉くない人(文脈判断しよう)
偉い人が複数のときは「~謙尊」の形になる(文脈判断しよう)
重要な敬語は「給ふ」「奉る」「参る」「侯ふ」「侍ふ」の5種
サ変の敬語は「おはす」「奏す」「啓す」
一般動詞の用法もある「聞こゆ」は意味「評判になる」が重要

2.「給ふ」の識別(尊敬語=四段、謙譲語=下二段)

給ふは尊敬語と謙譲語があり活用が違う

四段 尊敬下二 謙譲
未然(ず)給は給へ
連用(て)給ひ給へ
終止(。)給ふ×
連体(時)給ふ給ふる
已然(ど)給へ給ふれ
命令給へ給へよ
「給ふ」の識別1

要点は2つ(マドンナ式識別)
①「給」を除いて1文字「は、ひ、ふ」なら尊敬2文字「ふる、ふれ、へよ」なら謙譲
②「給へ」は接続を見て已然形・命令形なら尊敬未然形・連用形なら謙譲

もっと詳しく勉強したい人は

マドンナ古文(荻野文子先生)

をお勧めします。

問題「尊敬語か謙譲語を補って読みましょう」

①本を給ふ。
②本を読み給ふ。
③本を読み給ふるとき、
④本読み給へよ。

正解
①本をお与えになる。
②本をお読みになる。
③本を読み申し上げるとき、
④本を読み申し上げなさい。

解説
①の「給」は1文字なので尊敬本動詞なので「お与えになる」
②の「給」も1文字なので尊敬補助動詞なので「~なさる」
③の「給ふる」は2文字なので謙譲謙譲の「給ふ」は補助動詞のみ。
④の「給へよ」は2文字なので謙譲謙譲の「給ふ」は補助動詞のみ。

「給へ」以外は1文字か2文字かで、尊敬、謙譲を識別しましょう。

練習問題で「給へ」を識別してみよう

「給へ」だけは接続を確認して、尊敬か謙譲かを識別する必要があります。

「助動詞の接続」「助動詞の識別」「助詞の知識」などが必要になり、とても難しいです。

問題『給へ』尊敬語謙譲語どちらか識別して読みましょう」

①本を読み給へず。
②本を読み給へけり。
③本を読み給へり。
④本こそ読み給へ。
⑤本こそ読み給へる。(難問)

正解
①本を読み申し上げない。 謙譲
②本を読み申し上げた。謙譲
③本をお読みになられた。尊敬
④本をお読みになる。尊敬
⑤本をお読みになられた。尊敬

解説
「ず」は未然形接続。「給へ」が未然形なので謙譲
「けり」は連用形接続「給へ」が連用形なので謙譲
「り」はサ変未然・四段已然形接続(さみしい)「給へ」は四段已然なので尊敬
「こそ」は係助詞で已然形に結ぶ、「給へ」が已然形なので謙譲

⑤は難問。「こそ」が結んでいるのは完了「り」の已然形「る」。「り」はサ変未然・四段已然形接続(さみしい)、「給へ」は四段已然なので尊敬

文法ができるようになると敬語「給へ」の識別ができ主語を補いながら文章を読むことができます。

詳しくは、第5回「識別①、5つ識別」第8回「助動詞①、接続を覚えよう」でやる予定です。

「給へば」は文脈判断(接続で識別不能)

四段 尊敬下二 謙譲
未然(ず)給は給へ
連用(て)給ひ給へ
終止(。)給ふ×
連体(時)給ふ給ふる
已然(ど)給へ給ふれ
命令給へ給へよ
「給ふ」の識別1

給へ」に接続助詞「ば」がつくと文脈判断になります(つまり接続で識別不能)。

接続助詞「ば」
未然形+「ば」順接仮定条件「もし~したならば」。
已然形+「ば」順接確定条件「(実際に)~したので」。

「給へば」
「給へ」が未然形だとすると謙譲になり、「ば」が順接仮定条件になります。
「給へ」が已然形だとすると尊敬になり、「ば」が順接確定条件になります。

「給へば」の訳は
①「~し申しあげたならば」
②「~しなさったので」
のどちらかになります。

問題「『給へば』は尊敬か謙譲のどちらでしょう」

①本を給へば、とても喜んだ。
②本を読み給へば、国語ができるようになるかもしれない。
③本を読み給へば、国語ができるようになった。

正解
①(偉い人が)本を下さったので、(偉くない人が)喜んだ。
②(偉くない人が)本をお読み申し上げたとしたら、(偉い人が)国語ができるようになるかもしれない。
③(偉い人が)本をお読みになったので、(偉い人が)国語ができるようになった。

解説
①「給へ」が本動詞として使われているので尊敬(謙譲の「給ふ」は補助動詞のみ)
②文脈で順接仮定条件。「給へ」は未然形なので謙譲。主語が変わる。
③文脈で順接確定条件。「給へ」は已然形なので尊敬。主語は変わらない。

「給へば」はものすごく難しいです。仕組みを理解して主語を補うようにしましょう。はじめはかなりきついです。

★接続助詞をまとめた記事はこちら★
古文(第3回)「接続助詞『ば』『を』『に』」

この章をまとめ
「給」を除いて1文字「は、ひ、ふ」なら尊敬、2文字「ふる、ふれ、へよ」なら謙譲
・「給へ」は接続を見て已然形・命令形なら尊敬、未然形・連用形なら謙譲
「給へ」の識別には「助動詞の接続」「助動詞の識別」「助詞の知識」などが必要
・「給へば」は文脈判断(つまり接続で識別不能)

3.「参る」「奉る」(尊敬・謙譲)、「候ふ」「侍ふ」(謙譲・丁寧)

練習問題で「参る」「奉る」を識別してみよう

前の章の復習をします。

「奉る」尊敬語「お食べになる」「お召しになる(=着る)」「お乗りになる」
「奉る」謙譲語「さしあげる」

「参る」尊敬語「お食べになる」「お召しになる」
「参る」謙譲語「参上する」「さしあげる」

問題「尊敬語か謙譲語を補って訳しましょう」

①御車に奉る所に掛物をもって奉りて、(掛物=景品)
②宮に御酒参る。

正解
①(偉い人が)御車にお乗りになる所に(偉くない人が)掛物も取ってさしあげて、
②宮(皇族)にお酒をさしあげる

解説
があるので尊敬「お乗りになる」掛物は「食べたり」「着たり」「乗ったり」できないので謙譲「差し上げる」格助詞「に」で主語が変わっています。敬語で文脈で判断しましょう。
②宮は中宮、皇太子、その他の皇族です。偉い人に対して行動しているので謙譲

①は格助詞「を」「に」が3つあり、1つの「に」だけで主語が変わっています。格助詞「を」「に」でとつぜん主語が変わることがあることに注意して、敬語で主語を補っていきましょう。

★格助詞をまとめた記事はこちら★
古文(第2回)「格助詞『が』『を』『に』」

練習問題で「侯ふ」「侍ふ」を識別してみよう

前の章の復習をします。

本動詞と補助動詞がある敬語(3種)
「給ふ」「侯ふ」「侍ふ」

「給ふ」尊敬語本動詞「お与えになる」、補助動詞「~なさる」
「給ふ」謙譲語補助動詞「~し申し上げる」

侯ふ・侍ふ」謙譲語本動詞「お仕え申し上げる」
侯ふ・侍ふ」丁寧語補助動詞「~です、~ます」

問題「謙譲語か丁寧語を補って読みましょう」

①宮に侍ふ。
②この国を今一度せんたくいたし候ふ。

正解
①宮(皇族)にお仕え申しあげる
②この国を今一度洗濯したいです。坂本龍馬の手紙が出典です。

解説
本動詞で使われているので謙譲
補助動詞で使われて言うので丁寧

侯ふ」「侍ふ」は本動詞なら謙譲語、補助動詞なら丁寧語と覚えましょう。

この章のまとめ
・「参る」「奉る」は尊敬と謙譲がある。意味を覚えて文脈で判断しよう
侯ふ」「侍ふ」は謙譲と丁寧がある。本動詞なら謙譲語、補助動詞なら丁寧語

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★現代文、古文、英語の勉強法をまとめた記事はこちら★
国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介

前回:古文(第3回)「接続助詞『ば』『を』『に』」
次回:古文(第5回)「識別①『つ・ぬ』『る・れ』『なり』」

以上で、第4回「敬語『給ふ』『参る』『奉る』」は終わりです。

ご精読ありがとうございました。

今回取り扱った敬語は主語を補うのにとても大事です。「給ふ」が理解できれば、敬語の8割を理解したも同然だと思います。今回の内容を整理して古文が得意になりましょう。

次回は、古文(第5回)「識別①5つ識別」にする予定です。古典の重要な得点源になるところなので、次回も読んでいただけるとありがたいです。

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