古文の解き方や勉強法、参考書や問題集の紹介(第5回)「識別①『ぬ・ね』『る・れ』『なり』」
皆さんこんにちは。七隈国英塾の杉久保です。
今回は(第5回)「識別①『つ・ぬ』『る・れ』『なり』」を解説していきます。
識別は「ぬ・ね」「る・れ」「なり」「なむ」「に」の5種があり、直接得点に結びつく単元です。今回は簡単な「ぬ・ね」「る・れ」「なり」をやっていきます。
それでは、七隈国英塾の作法にのっとり今回の要点を3行でまとめます。
①「ぬ・ね」は2択。打消し「ず」と完了「ぬ」
②「る・れ」は2択。完了「り」と受可自尊「る」
③「なり」は2択。伝聞推定「なり」と断定「なり」、その他3つ。
★現代文、古文、英語の勉強法をまとめた記事はこちら★
国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介
前回:古文(第4回)「敬語『給ふ』『参る』『奉る』」
次回:古文(第6回)「識別②『なむ』」
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「識別」を覚えて使えるようになるには
結構時間がかかります(私自身は2か月)。
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1.「ぬ・ね」は2択。打消し「ず」と完了「ぬ」
未然形接続なら打消し「ず」、連用形接続なら完了「ぬ」
まず、高1から習うの基本から。
未然形+「ぬ・ね」は打消しの助動詞「ず」
連用形+「ぬ・ね」は完了の助動詞「ぬ」
問題「打消しか完了かを明らかにして訳しましょう」
①風立ちぬ。
②風立たぬ時。
解答
①風が立った
②風が立たない時
解説
①「立ち」が連用形なので、完了の助動詞「ぬ」
②「立た」が未然形なので、打消しの助動詞「ず」
立つ 四段活用 | |
未然(ず) | 立た |
連用(て) | 立ち |
終止(。) | 立つ |
連体(時) | 立つ |
已然(ど) | 立て |
命令 | 立て |
未然形と連用形が同じ形なら「ず」「ぬ」の活用を見る
未然形と連用形が同じ形だと接続で判断できません。
問題「打消しか完了かを明らかにして訳しましょう」
風流れぬ。
流る 下二段 | |
未然(ず) | 流れ |
連用(て) | 流れ |
終止(。) | 流る |
連体(時) | 流るる |
已然(ど) | 流るれ |
命令 | 流れよ |
未然・連用が同じ時は、打消し「ず」完了「ぬ」自体の活用をみます。
打消し「ず」 (特殊型) | 完了「ぬ」 (ナ変型) | |
未然(ず) | ず ざら | な |
連用(て) | ず ざり | に |
終止(。) | ず | ぬ |
連体(時) | ぬ ざる | ぬる |
已然(ど) | ね ざれ | ぬれ |
命令 | ざれ | ね |
問題「上の表を見ながら、打消しか完了かを明らかにしよう」
風流れぬ。
正解
風が流れた。
解説
「ぬ」の後ろに句点「。」がついているので、「ぬ」自体は終止形。
終止形が「ぬ」なのは、完了「ぬ」(分からない人は上の表を確認)。
要するに、助動詞の活用を知らないとこの問題は解けないのです。
助動詞の接続、活用、意味は必ず覚えましょう。
掛け算九九みたいなもので、これができないと何もできません。
★助動詞をまとめた記事はこちら★
第8回「助動詞①接続を覚えよう」(まだ)
第9回「助動詞②推量系助動詞」(まだ)
第10回「助動詞③過去完了系助動詞」(まだ)
練習問題で「ぬ」「ね」の識別をしてみよう
問題「打消しか完了かを明らかにして訳しましょう」
①師匠走りぬ。
②師匠逃げぬ。
③師匠逃げぬ時。
④師匠や逃げぬ。
⑤師匠逃げねば、(難問)
解答
①師匠が走った。(完了)
②師匠は逃げた。(完了)
③師匠が逃げない時。(打消し)
④師匠は逃げないだろうか(いや逃げる)(打消し)
⑤師匠が逃げないので(打消し)
解説
①「走り」が連用形。連用形接続は完了の「ぬ」
②句点「。」の前なので「ぬ」は終止形。完了の「ぬ」
③体言「時」の前なので「ぬ」は連体形。打消しの「ず」
④係助詞「や」は連体形で結ぶので「ぬ」は連体形。打消しの「ず」
⑤は難問。接続助詞「ば」は、「未然形+ば」で順接仮定条件。「已然形+ば」で順接確定条件。「ね」は已然形か命令形のどちらか。今回は已然形しかないので、「ね」自体は已然形。よって、「ね」は打消し「ず」(分からない人は打消し「ず」完了「ぬ」の活用を見ましょう)
④の係助詞「や」や⑤の接続助詞「ば」のように、他の文法と絡めてくることが多いです。1つ1つ整理して覚えましょう。
★接続助詞をまとめた記事はこちら★
古文(第3回)「接続助詞『ば』『を』『に』」
この章をまとめ
・未然形+「ぬ・ね」は打消しの助動詞「ず」
・連用形+「ぬ・ね」は完了の助動詞「ぬ」
・未然・連用が同じ時は、打消し「ず」完了「ぬ」自体の活用をみよう
・助動詞の活用を知らないと「ぬ」「ね」の識別はできない。
・助動詞の接続、活用、意味は必ず覚えよう
・「ぬ」「ね」の識別は、助詞などの他の文法と絡めてくることが多い
2.「る・れ」は2択。完了「り」と受可自尊「る」
上が「e段」なら完了「り」、それ以外は受可自尊「る」
「る」「れ」の識別は2択です。
上が「e段」なら、完了の助動詞「り」(100%例外無し)
上が「e段以外」なら、受け身、尊敬、自発、可能の助動詞「る」
完了の助動詞「り」の接続はかなり特殊で、サ変の未然形と四段の已然形(さみしい)です。要点は「e段」=「え段(え、け、せ、~)」につくということです。
サ変「す」 | 四段「走る」 | |
未然(ず) | せ(e段) | 走ら |
連用(て) | し | 走り |
終止(。) | す | 走る |
連体(時) | する | 走る |
已然(ど) | すれ | 走れ(e段) |
命令 | せよ | 走れ |
問題「例文の「る」と同じものを①~②から選びましょう」
例文「本を読み給へるとき」
①師匠走らる。
④師匠走れる時、
解答
①「師匠走れるとき」の「る」(完了)
解説
例文「本を読み給へるとき」(e段)
①師匠走らる。
④師匠走れる時、(e段)
例文の「給へ」が「e段」。よって「る」は完了の「り」
①「走ら」が「e段以外」。師匠は偉いので尊敬の「る」
④「走れ」が「e段」。よって「る」は完了の「り」
要点は、「e段」か「e段以外か」で、完了「り」かそうでないかを見分けましょう。例文には「e段」があるので、「完了」と即断します。あとは①~④の傍線部の前の「e段」を探すだけでいいのです。解き方を知っていれば、本文を読まずに2秒でできるのです。
受可自尊「る」は文脈判断
受け身、自発、尊敬、可能の「る」「らる」文脈判断です。
問題「受可自尊のどれでしょう」
①小さい魚が大きい魚に食べらる。
②賞味期限が過ぎた牛乳は飲めるかな?
③先生が職員室におられる時。
④夕陽を見ると涙が流る。
①受け身の「らる」
②可能の「る」
③尊敬「る」
④自発「る」
受可自尊の「る」「らる」は現在でも同じように使います。可能は後ろに打消しが来ることが多い事、尊敬は偉い人がいるときに使われることが多い事、に注意して文脈判断しましょう。
ちなみに「る」と「らる」の接続の違いについては、
①「る」「す」の接続(直前の形)は、四段、ナ変、ラ変の未然形。
②「らる」「さす」の接続は、四段、ナ変、ラ変以外の未然形。
一見難しそうですが、この接続の意味するものはとても簡単です。
四段、ナ変、ラ変動詞や(この活用の助動詞)の未然形は「a段」ですが、それ以外の動詞、形容詞、形容動詞、助動詞の未然形は「a段」ではありません。
上が「a段」ならば、そのまま「る」「す」を置く。
上が「a段以外」ならば、自分で「a段」を補って、「らる」「さす」になるだけです。
練習問題で「る」「れ」の識別をしてみよう
問題「「る」と同じものを①~④から選びましょう」
例文「御文を書き給へるとき」
①つゆまどろまれず。
②古都のみぞ、思はるる。
③かの大納言(藤原公任)、いずれの船にか乗らるべき。
④師匠走れる時、
解答
④師匠走れる時、
解説
「御文を書き給へるとき」(e段)
①つゆまどろまれず。
②古都のみぞ、思はるる。
③かの大納言(藤原公任)、いずれの船にか乗らるべき。
④師匠走れる時、(e段)
例文の「給へ」が「e段」。よって「る」は完了の「り」
①「まどま」が「e段以外」、後ろに打消しがついてるので可能「る」
②「思は」が「e段以外」、自発の「る」(文脈によっては尊敬)
③「乗ら」が「e段以外」、偉い人がいるので尊敬「る」
④「走れ」が「e段」。よって「る」は完了の「り」
「る」「れ」の識別は、
①「e段」「e段以外」かを見て、完了「り」を判断しましょう。
②打消しがあれば可能「る」、偉い人がいれば尊敬「る」を確認しましょう。
③最後に「受け身」か「自発」を判断していきましょう。
この章をまとめ
・上が「e段」なら、完了の助動詞「り」(100%例外無し)
・上が「e段以外」なら、受け身、尊敬、自発、可能の助動詞「る」
・後ろに打消しがあれば可能「る」
・偉い人がいれば尊敬「る」
・最後に「受け身」「自発」を判断しよう。
3.「なり」は2択。伝聞推定「なり」と断定「なり」、その他3つ。
終止形・ラ変の連体形接続なら伝聞推定「なり」、体言・連体形なら断定「なり」
「なり」の識別は2択
終止形とラ変の連体形接続なら、伝聞推定の助動詞「なり」(~という噂の)
体言と連体形接続なら、断定の助動詞「なり」(~である)
問題「2つの『なり』を識別して訳しましょう」
男もすなる日記といふものを、女の私もしてみんとてするなり。
正解
男もすなる。伝聞推定の「なり」
するなり。断定の「なり」
解説
男もすなる日記といふものを、女の私もしてみんとてするなり。
「す」はサ変動詞「す」の終止形。伝聞推定の助動詞「なり」
「する」はサ変動詞「す」の連体形。断定の助動詞「なり」
終止形とラ変の連体形接続についての補足をします。
終止形とラ変の連体形接続は、要するにu段ということです。
活用する語(動詞、形容詞、形容動詞、助動詞)の中で、終止形が「u段」でないのはラ変と形容詞のみです。ラ変だけが終止形が「i段」です。「ら、り、り、る、れ、れ」
終止形(u段)とラ変の連体形接続(u段)とは「u段」につくということなのです。
接続が分からない「なり」は文脈判断
上が四段とラ変の連体形の場合は文脈判断となります。
四段 読む | |
未然(ず) | 読ま |
連用(て) | 読み |
終止(。) | 読む |
連体(時) | 読む |
已然(ど) | 読め |
命令 | 読め |
例文
①本を読むなり。
②極楽浄土は西方にあるなり。
解説
①「読む」が四段動詞なので、終止形か連体形か識別不可能。
②「ある」がラ変動詞の連体形なので、識別不可能。
終止形とラ変の連体形接続なら、伝聞推定の助動詞「なり」
体言と連体形接続なら、断定の助動詞「なり」
「なり」の識別は文脈判断になることが非常に多いです。難関大学で出題される傾向があります。
3つの例外。①「~にあり」の短縮形の「なり」、②動詞の「なる」、③ナリ活用形容動詞の活用語尾
「なり」の識別には3つの例外があります。
①「~にあり」→「にゃり?」→「なり」と変化したもの
②四段動詞「成る」、下二段動詞「慣る」、四段動詞「亡くなる」の活用語尾など
③ナリ活用形容動詞の活用語尾
問題「『なり』を識別して訳しましょう」
①春日なる山に登りたり。
②法師にならんがため、読経をしたりけり。
③この部屋は静かなり。
④大納言の娘、なくなりぬなり。(難問)
解答
①春日にある山に登った。
②法師に成る(ようにする)ため、読経をした。
③この部屋は静かである。
④大納言の娘が、亡くなったという噂だ。
解説
①「~にある」の意味。体言に接続しているからという理由で、断定の助動詞「なり」(~である)で訳すと意味が通じない。
②自立語で使われているので動詞「成る」。「に」は格助詞「に」
③形容動詞「静かなり」の活用語尾。
④は難問。四段動詞「亡くなる」の活用語尾は簡単。「なくなり」は連用形なので、「ぬ」は完了「ぬ」の終止形。よって、終止形接続の「なり」は伝聞推定の「なり」。
④は「ぬ・ね」の識別と「なり」の識別の2つを理解してないと正解できません。識別の重要性が分かったでしょうか?
この章のまとめ
・終止形とラ変の連体形接続なら、伝聞推定の助動詞「なり」
・体言と連体形接続なら、断定の助動詞「なり」
・「なり」の識別は文脈判断になることが非常に多い
・例外1、「~にあり」→「なり」と変化したもの
・例外2、四段動詞「成る」、下二段動詞「慣る」、四段動詞「亡くなる」の活用語尾
・例外3、ナリ活用形容動詞の活用語尾
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★現代文、古文、英語の勉強法をまとめた記事はこちら★
国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介
前回:古文(第4回)「敬語『給ふ』『参る』『奉る』」
次回:古文(第6回)「識別②『なむ』」
以上で、第5回「識別①『つ・ぬ』『る・れ』『なり』」は終わりです。
ご精読ありがとうございました。
今回取り扱った識別は、直接得点につながる重要な単元です。まずは識別の種類を覚えて、練習を繰り返していくといいと思います。
次回は第6回「識別②『なむ』」にする予定ですので、よろしければ、次回も読んでいただけるとありがたいです。