古文の解き方や勉強法、参考書や問題集の紹介(第6回)「識別②『なむ』」
皆さんこんにちは。七隈国英塾の杉久保です。
今回は(第6回)「識別②『なむ』」を解説していきます。
識別は「ぬ・ね」「る・れ」「なり」「なむ」「に」の5種があり、直接得点に結びつく単元です。今回は割と複雑な「なむ」をやっていきます。
それでは、七隈国英塾の作法にのっとり今回の要点を3行でまとめます。
①「なむ」は4択。願望の終助詞「なむ」、確述用法「な+む」、係助詞「なむ」、ナ変動詞の活用語尾+「む」
②完了→強意の確述用法8つ「てむ、なむ、つらむ、ぬらむ、つべし、ぬべし、てまし、なまし」
③推量系助動詞「む(むず)、じ、べし、まじ、らむ、けむ、めり、らし、なり」はまとめて覚えよう
★現代文、古文、英語の勉強法をまとめた記事はこちら★
国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介
前回:古文(第5回)「識別①『つ・ぬ』『る・れ』『なり』」
次回:古文(第7回)「識別③『に』」
1.「なむ」は4択。願望の終助詞「なむ」、確述用法「な+む」、係助詞「なむ」、ナ変動詞の活用語尾+「む」
「なむ」の識別は接続を見よう
「なむ」の4つの識別は接続を見ます。
①未然形+「なむ」、他者に対する願望の終助詞「~してほしい」
②連用形+「なむ」、完了「ぬ」の未然形「な」+スイカ止めて婉曲「む」(確述用法)
③体言、様々な語+「なむ」、係助詞「なむ」
④ナ変動詞「死ぬ」「去ぬ」「往ぬ」の未然形の活用語尾+スイカ止めて婉曲「む」
例文
①花咲かなむ。「花よ咲いてほしい」
②花咲きなむ。「花がきっと咲くだろう」確述用法
③花なむ咲く。「花が咲く」、「咲く」は連体形。
④去なむ。「去りたい」(意志)、「去るだろう」(推量)
まずはこの4つの例文を覚えて、「なむ」を識別していきましょう。
確述用法は次の章でやります。
「む」のスイカ止めて婉曲の補足をします。
①ス「推量」(~だろう)
②イ「意志」(~したい)
③カ「可能」(~できる)
④止「当然」(~しなければならない)
⑤め「命令」(~しなさい)
⑥て「適当」(~したほうがいい)
⑦婉曲(えんきょく) 「む」+体言のとき、「~のような体言」。
「私はあなたが好きです」→直接的なものの言い方。
「私はあなたのような人が好きよ」→婉曲的なものの言い方
(婉曲は「回りくどい」の意味)
未然形と連用形が同じときは文脈判断。「なむ~」で確術用法「な」+「む」
上が上二段、下二段の時は、未然形と連用形が同形になるので文脈判断になります。「ぬ・ね」の識別と同じです。
★「ぬ・ね」の識別をまとめた記事はこちら★
古文(第5回)「識別①『つ・ぬ』『る・れ』『なり』」
問題「『なむ』に注意して訳しましょう」
師匠逃げなむ。
正解
①師匠には逃げてほしい。(他者に対する願望の終助詞)
②師匠はきっと逃げるだろう。(確述用法「な」+「む」)
ただし、「なむ~」と文が続く場合は、終助詞が入らないので確述用法「な」+「む」になります。
問題「『なむ』に注意して訳しましょう」
師匠逃げなむ時、
正解
師匠がきっと逃げるようなとき。(確述用法「な」+「む」)
解説
「逃げる」が下二段動詞なので未然と連用が同じ形。ただし「時」と文章が続いているので終助詞は入らない。よって(確述用法「な」+「む」)。
また「む」+体言「時」となっているので、「む」は婉曲(ような)になる。
練習問題で「なむ」の識別をしてみよう
問題「『なむ』を識別しましょう」
①誘う水あらば往なむとぞ思う。(往=い)
②その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。
③酔いて入りたまひなむとす。
④はや夜も明けなむと思ひつつ 難問
解答
①ナ変動詞+む
②係助詞「なむ」
③確述用法「な」+「む」
④願望の終助詞「なむ」か確述用法「な」+「む」のどちらか。「夜が早く開けてほしい」か「夜がきっと早く明けるだろう」かを文脈判断。
解説
①「死ぬ・去ぬ・往ぬ」はナ変動詞。「去ぬ・往ぬ」は「いぬ」とひらがなで書かれていることが多いので要注意。
②「ける」が連体形であることに注意。「ぞ・なむ・や・か」→連体形、「こそ」→「已然形」
③「給ひ」は連用形であることに注意。四段動詞「給ふ」は尊敬、下二段動詞「給ふ」は謙譲であることも大事。
④下二段動詞「明け」が未然・連用の可能性があり、「と」で前の文が終わっているので終助詞の可能性が消せない。よって、文脈判断。出典は「伊勢物語」。
★敬語をまとめた記事はこちら★
古文(第4回)「敬語『給ふ』『参る』『奉る』」
この章をまとめ
・未然形+「なむ」、他者に対する願望の終助詞「~してほしい」
・連用形+「なむ」、完了「ぬ」の未然形「な」+スイカ止めて婉曲「む」(確述術用法)
・体言、様々な語+「なむ」、係助詞「なむ」
・ナ変動詞「死ぬ」「去ぬ」「往ぬ」の未然形の活用語尾+スイカ止めて婉曲「む」
2.完了→強意の確述用法8つ「てむ、なむ、つらむ、ぬらむ、つべし、ぬべし、てまし、なまし」
「つ・ぬ」+「推量系助動詞」、確述用法「きっと~」
完了「つ・ぬ」は後ろに推量系助動詞がつくと、強意「きっと」に変化します。
これを確述用法と言います。
推量系助動詞は、終止形接続の助動詞6つ「べし。まじ、らむ、めり、らし、なり」と未然形接続の助動詞3つ「む、むず、じ」のことを言います。
この中で確述用法をとるのは
「てむ、なむ、つらむ、ぬらむ、つべし、ぬべし、てまし、なまし」
この形になると確述用法になるので、今覚えましょう。よく出題されるので暗記必須になります。
連用形+「なむ」は「きっと+スイカ止めて婉曲」
連用形+「な」+「む」の形では、「な」は完了→強意となりますが、「む」はスイカ止めて婉曲のどれかになります。
問題「『なむ』に注意して訳しましょう」
①花咲きなむ。
②酔いて入りたまひなむとす。
③恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ。難問
解答
①花がきっと咲くだろう。(推量)
②酔ってきっと(部屋に)お入りになろうする。(意志)
③恋にきっと朽ち果てるような名が惜しい。(婉曲)
解説
①「む」は婉曲50%、推量・意志45%、その他5%の割合(個人的主観)。まず、後ろに体言がないかを注意し、無かったら大体「推量か意志のどちらか」。
②同じ
③「朽ち」が未然・連用の可能性があるが、文がつながっているので確述用法「な」+「む」。後ろに体言「名」があるので、「む」は婉曲「ような」になる。
補足「当然」と「適当」のちがい
「む」の「スイカ止めて婉曲」の中で、当然「~しなければならない」と適当「~したほうがいい」の訳し分けが難しい、とよく質問されるので補足します。
①ス「推量」(~だろう)
②イ「意志」(~したい)
③カ「可能」(~できる)
④止「当然」(~しなければならない)
⑤め「命令」(~しなさい)
⑥て「適当」(~したほうがいい)
⑦婉曲(えんきょく) 「む」+体言のとき、「~のような体言」。
覚え方は
当然=葬式の服装
適当=結婚式の服装
葬式には黒い服・黒いネクタイを「着なければならない」です。
結婚式には白と黒でない明るい服なら大丈夫です。(白は主役のための色)
「黄色、ピンク、赤色、どのドレスがいいかしら?」
「ピンクにしたほうがいいんじゃない?」
この章をまとめ
・確述用法。完了「つ・ぬ」は後ろに推量系助動詞がつくと、強意「きっと」に変化する。
・推量系助動詞は、終止形接続の助動詞6つ「べし。まじ、らむ、めり、らし、なり」と未然形接続の助動詞3つ「む、むず、じ」
・「む」スイカ止めて婉曲
・「む」は婉曲50%、推量・意志45%、その他5%の割合
・後ろに体言がないかを注意し、無かったら「推量か意志のどちらか」
・当然=葬式の服装。適当=結婚式の服装
3.推量系助動詞「む(むず)、じ、まし、べし、まじ、らむ、けむ、めり、らし、なり」はまとめて覚えよう
「まじ」⇔「べし」≒「む・むず」⇔「じ」
推量系助動詞は、
終止形接続の助動詞6つ「べし、まじ、らむ、めり、らし、なり」
未然形接続の助動詞3つ「む、むず、じ」
推量系助動詞は覚えるのが大変なので、図で整理して覚えていきましょう。
「まじ」⇔「べし」≒「む・むず」⇔「じ」
「まじ」not スイカ止めて
「べし」スイカ止めて
「む・むず」スイカ止めて婉曲
「じ」not スイ
「べし」と「む・むず」は婉曲があるか無いかの差です。
「まじ」は「べし」の打消し。「じ」は「む」の打消しです。
「む」は婉曲(50%)を除くとほとんど「推量・意志」(45%)なので、「じ」は notスイ(推量・意志)になります。
未来「む・むず」「じ」、現在「らむ」、過去「けむ」
「む・むず」スイカ止めて婉曲
「じ」 not スイ
「らむ」現在推量(~しているだろう)現在婉曲(~しているような)
「けむ」過去推量(~していただろう)現在婉曲(~していたような)
「む・むず」、「じ」はちょっと未来です。
「らむ」は現在、「けむ」は「けり」と「む」の子供なので過去。
婉曲をもつのは、「む・むず」、「らむ」、「けむ」、「めり」(推定)の5つです。
推定系助動詞「めり」=目、「らし」=耳、「なり」=「うわさ」
推量と推定のちがいは、根拠があるか無いかの差です。推定には根拠があります。
「めり」視覚推定(~のようだ)、婉曲(~ような)「ようだ、ような」で覚えよう。
「らし」聴覚推定(~らしい)
「なり」伝聞推定(~という噂の)
例文
「めり」視覚情報からの推定
「教室に入ると、隣の席のA君がの席が空いていた」
「Aくんは休みのようだ」
「らし」聴覚情報からの推定
「朝目覚めると、台所からトントンと大根を切る音が聞こえる」
「朝ごはんは味噌汁らしい」
「なり」噂からの推定(伝聞推定)
奥山に猫又といふものがありて、人を食らふなり。
奥山に猫又という化け猫がいて、人を食べるという噂だ。
「食らふ」は四段動詞の終止形。終止形に接続する「なり」は伝聞推定の助動詞「なり」。断定の助動詞「なり」ではない。
★「なり」の識別をまとめた記事はこちら★
古文(第5回)「識別①『つ・ぬ』『る・れ』『なり』」
婉曲は「(む・むず・らむ・けむ)+めり」
婉曲をもつのは、「む・むず」、「らむ」、「けむ」、「めり」(推定)の5つです。
復習ですが、婉曲は下に体言(名詞)がついた
「む+体言」、「むず+体言」、「らむ+体言」、「けむ+体言」、「めり+体言」とき、
(~のような)という訳になります。
「む・まず」スイカ止めて婉曲
「らむ」現在推量(~しているだろう)、現在婉曲(~しているような)
「けむ」過去推量(~していただろう)、過去婉曲(~していたような)
「めり」視覚推定(~ようだ)、婉曲(~ような)
まとめて今覚えましょう。
この章のまとめ
・推量系助動詞は9つ。終止形接続の助動詞6つ「べし、まじ、らむ、めり、らし、なり」、未然形接続の助動詞3つ「む、むず、じ」
・「まじ」⇔「べし」≒「む・むず」⇔「じ」
・「む・むず」、「じ」はちょっと未来。「らむ」は現在。「けむ」は過去。
・推定には根拠がある。「めり」は目。「らし」は耳。「なり」は噂。
・婉曲は5つ。「む・むず」、「らむ」、「けむ」、「めり」
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前回:古文(第5回)「識別①『つ・ぬ』『る・れ』『なり』」
次回:古文(第7回)「識別③『に』」
以上で、第6回「識別②『なむ』」は終わりです。
ご精読ありがとうございました。
今回取り扱った識別は、直接得点につながる重要な単元です。まずは識別の種類を覚えて、練習を繰り返していくといいと思います。
次回はに第7回「識別③『に』」する予定ですので、よろしければ、次回も読んでいただけるとありがたいです。