古文の解き方や勉強法、参考書や問題集の紹介(第16回)「係助詞『ぞ・なむ・や・か・こそ・は・も』『結びの消滅』と『結びの省略』」
みなさんはじめまして。
七隈国英塾の杉久保英司と申します。当ホームページをご覧いただきありがとうございます。
今回は(第16回)「係助詞『ぞ・なむ・や・か・こそ・は・も』『結びの消滅』と『結びの省略』」を解説していきます。
係助詞は中学生から習う古文文法ですが、「結びの消滅」などの複雑な文法問題が大学受験でも問われます。
それでは、七隈国英塾の作法にのっとり今回の要点を3行でまとめます。
①「ぞ・なむ・や・か」→連体形。「こそ」→已然形
②大学受験で特に狙われる「結びの消滅」と「結びの省略」
③係助詞「は」「も」は、「やは」「かは」「もぞ」「もこそ」だけ覚えよう
国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介
「現代文」「古文」「英語」のまとめリンクになっています。
第1回に参考書・問題集の紹介を行っております。
できるだけ分かりやすく伝えることで、皆さんの成長のきっかけとなれば良いなあと思っています。
★現代文、古文、英語の勉強法をまとめた記事はこちら★
国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介
前回:古文(第15回)「体言・連体形接続『ごとし・なり・たり』と「サ変未然・四段已然(さみしい)」接続の助動詞『り』
次回:古文(第17回)未定
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1.「ぞ・なむ・や・か」→連体形。「こそ」→已然形
中学生の復習
係助詞の基本
①文中に「ぞ・なむ・や・か・こそ」があると、句点「。」の前でも終止形で終わらない。
②「ぞ・なむ・や・か」→連体形で結ぶ。
③「こそ」→已然形で結ぶ。
④「や・か」だけは疑問・反語の意味がある。その他の係助詞は意味を覚えなくてもよい。
疑問「~だろうか」。反語「~だろうか、いや~ない。」
降る(四段動詞) | |
未然(ず) | 降ら |
連用(て) | 降り |
終止(。) | 降る |
連体(とき) | 降る |
已然(ど) | 降れ |
命令 | 降れ |
例文)
雨ぞ降る。「雨が降る」
雨なむ降る。「雨が降る」
雨や降る。「雨が降るだろうか?」「雨が降るだろうか、いや降らない。」雨か降る。
雨こぞ降れ。「雨が降る」
高校2年生の文法(必ず覚えよう)。「こそ~已然形、」→「逆説確定条件『~したけれど』」
例文)
中垣こそあれ、ひとつ家のやうなれば、「中垣はあるのだけど、一つの家のようなので」
雨こそ降れ、運動会は行われた。「雨が降ったのだけど、運動会は行われた」
「練習問題」
走る(四段) | 流る(下二) | 老ゆ(上二) | 射る(上一) | |
未然(ず) | 走ら | 流れ | 老い | い |
連用(て) | 走り | 流れ | 老い | い |
終止(。) | 走る | 流る | 老ゆ | いる |
連体(とき) | 走る | 流るる | 老ゆる | いる |
已然(ど) | 走れ | 流るれ | 老ゆれ | いれ |
命令 | 走れ | 流れよ | 老いよ | いよ |
問題「太線を適切な形に直しましょう」(わからない人は上の活用表を見ましょう)
①先生ぞ12月に走る。ゆえに12月は「師走」という。
②水こそ流る、ソーメンが流れてこない。
③みな人なむ老ゆ。
④好きなあの子のハートや射る。
解答
①先生ぞ12月に走る。ゆえに12月は「師走」という。
②水こそ流るれ、ソーメンが流れてこない。「水は流れるけれど、ソーメンが流れてこない。」
(こそ已然形、~)=(逆説確定条件)
③みな人なむ老ゆる。
④好きなあの子のハートや射る。「好きなあの子のハートを射るのだろうか?疑問(いや射ない反語)」
2.大学受験で特に狙われる「結びの消滅」と「結びの省略」
結びの消滅
「結びの消滅」とは?
・「係り結び」より「接続助詞」の接続が優先され、係り結びが消滅してしまうこと。
接続助詞の接続>係助詞の係り結び
「接続助詞」の接続と意味(復習・必ず覚えよう!)
接続助詞「ば」「ば」「とも」「ど・ども」(主語が変わる可能性がある)
①未然形+「ば」順接仮定条件「(もし)~したならば」
②已然形+「ば」順接確定条件「(実際に)~したので」
③終止形+「とも」逆接仮定条件「(もし)~したとしても」
④已然形+「ど・ども」逆接確定条件「(実際に)~したけれど」
4つとも「意味が違います」。全部「主語が変わる可能性がある」。
例文)この通りに覚えましょう(必ず困った時に皆さんを助けてくれます)
①呼ばば、来る。
②呼べば、来る。
③呼ぶとも、来ず。
④呼べど、来ず。(=呼べども、来ず)。
呼ぶ(4段活用)
未然 連用 終止 連体 已然 命令
ば び ぶ ぶ べ べ
訳)
①呼ばば、来る。
(もし)呼んだとしたら、来るだろう(順接仮定条件)
要するに「未だ(いまだ)呼んでいないけど、もし呼んだとしたら来てくれるだろう」という「順接の仮定の話」
②呼べば、来る。
(実際に)呼んだので、来た(順接確定条件)
「已に(すでに)呼んだので、実際に来てくれた」という「順接の確定した話」
③呼ぶとも、来ず。
(もし)呼んだとしても、来ないだろう(逆接仮定条件)
「未だ呼んでないんだけど、もし呼んだとしても来ないだろう」という「逆接の仮定の話」
④呼べど、来ず。
呼んだけど、来てくれなかった(逆接確定条件)
「已に呼んだんだけど、来てくれなかった」という「逆接の確定の話」
接続助詞「て」「で」(主語が変わらない)
①連用形+「て」単純接続「~して、」
②未然形+「で」打消し単純接続「~しないで、」
★接続助詞をまとめた記事はこちら★
第10回「主語が変わる助詞『を、に、ば、ば、ども、が、とも、を、に(鬼婆どもが友鬼)』変わらない助詞『て、で、して、つつ、ながら』」
「練習問題2」
走る(四段) | 流る(下二) | 老ゆ(上二) | 射る(上一) | |
未然(ず) | 走ら | 流れ | 老い | い |
連用(て) | 走り | 流れ | 老い | い |
終止(。) | 走る | 流る | 老ゆ | いる |
連体(とき) | 走る | 流るる | 老ゆる | いる |
已然(ど) | 走れ | 流るれ | 老ゆれ | いれ |
命令 | 走れ | 流れよ | 老いよ | いよ |
問題「太字を適切な形に直しましょう」
①先生ぞ10月も走るど、10月は「師走」と言わず。
②水こそ流るとも、ソーメンは流れず。
③みな人なむ老ゆで、みな若い桃源郷。
④好きなあの子のハートや射るば、2人でデートに行った。
ヒント)接続助詞の接続
①未然形+「ば」順接仮定条件「(もし)~したならば」
②已然形+「ば」順接確定条件「(実際に)~したので」
③終止形+「とも」逆接仮定条件「(もし)~したとしても」
④已然形+「ど・ども」逆接確定条件「(実際に)~したけれど」
⑤連用形+「て」単純接続「~して、」
⑥未然形+「で」打消し単純接続「~しないで、」
例文)接続助詞の接続の覚え方(必ず困った時に皆さんを助けてくれます)
①呼ばば、来る。
②呼べば、来る。
③呼ぶとも、来ず。
④呼べど、来ず。(=呼べども、来ず)
呼ぶ(4段活用)
未然 連用 終止 連体 已然 命令
ば び ぶ ぶ べ べ
走る(四段) | 流る(下二) | 老ゆ(上二) | 射る(上一) | |
未然(ず) | 走ら | 流れ | 老い | い |
連用(て) | 走り | 流れ | 老い | い |
終止(。) | 走る | 流る | 老ゆ | いる |
連体(とき) | 走る | 流るる | 老ゆる | いる |
已然(ど) | 走れ | 流るれ | 老ゆれ | いれ |
命令 | 走れ | 流れよ | 老いよ | いよ |
問題
①先生ぞ10月も走るど、10月は「師走」と言わず。
②水こそ流るとも、ソーメンは流れず。
③みな人なむ老ゆで、みな若い桃源郷。
④好きなあの子のハートや射るば、2人でデートに行った。
正解
①先生ぞ10月も走るれ、10月は「師走」と言わず。(已然形+ど)
②水こそ流るとも、ソーメンは流れず。(終止形+とも)
③みな人なむ老いで、みな若い桃源郷。(未然形+で)
④好きなあの子のハートや射れば、2人でデートに行った。(已然形+ば)
訳
①先生は10も走るけれど、10月は「師走」と言わない。(逆説確定条件)
②もし水が流れるとしても、ソーメンは流れない。(逆説仮定条件)
③みな人老いないで、みんな若い桃源郷。(打消しの単純接続)
④好きなあの子のハートや射たので、2人でデートに行った。(逆説確定条件)
まとめ
「結びの消滅」とは
・「係り結び」より「接続助詞」の接続が優先され、係り結びが消滅してしまうこと。
結びの省略
「結びの省略」とは?
・係助詞の後ろは(昔の読者は)書かなくてもわかるので、後ろの語が省略されているだけ。
・会話文で多い。「~にや(あらむ)」(~であろうか?)「~にこそ(あるらめ)」(~であるだろう)
・中世の説話集の最終文末に多い「~とぞ(ありける)。」(~だとさ)「~となむ(ありける)」(~だとさ)
・受験生は係助詞の後ろに省略されている語を補おう。。
3.係助詞「は・も」は、「やは」「かは」「もぞ」「もこそ」だけ覚えよう
係助詞「は」は、係助詞「や・か」とセットで使う
係助詞「は」
・係助詞「は」は単独では使われない。
・係助詞「や・か」とセットで、「やは・かは」になる。
・「やは・かは」=「や・か」。意味は全く同じ。
例文)
雨や降る。「雨が降るだろうか?(いや降らない)」
雨やは降る。「雨が降るだろうか?(いや降らない)」
・
係助詞「も」は、係助詞「ぞ・こそ」とセットで使う
係助詞「も」
・係助詞「も」は単独では使われない。
・係助詞「ぞ・こそ」とセットで、「もぞ、もこそ」になる。
・「もぞ・もこそ」で「~するといけない」と訳す。
例文)
雨もぞ降る。傘を持って行け。(雨が降るといけない。傘を持って行け)
雨もこそ降れ。傘を持って行け。(雨が降るといけない。傘を持って行け)
未然 連用 終止 連体 已然 命令
降ら 降り 降る 降る 降れ 降れ
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次回:古文(第17回)未定
以上で、第16回「係助詞『ぞ・なむ・や・か・こそ・は・も』『結びの消滅』と『結びの省略』」は終わりです。
ご精読ありがとうございました。
今回取り扱った係助詞は、たまに出題される単元です。まずは種類を覚えて、練習を繰り返していくといいと思います。
次回は未定です。よろしければ、次回も読んでいただけるとありがたいです。