古文の解き方や勉強法、参考書や問題集の紹介(第1回)「古文の主語が取れない3つの要因」

皆さんこんにちは。七隈国英塾の杉久保です。

今回は「古文の主語が取れない3つの要因」を解説して聞きます。

古文が読めないのは主語が分からないから

ということは知っていると思いますが、具体的にどのようなことにに注意して読めばいいのでしょうか?

それでは、七隈国英塾の作法にのっとり今回の要点を3行でまとめます。

①主語が変わる所は決まっている格助詞「を」「に」、接続助詞「ば」「を」「に」
②敬語で主語を特定する
③尊敬の助動詞「る」「らる」「す」「さす」も、たまには思い出しましょう

★現代文、古文、英語の勉強法をまとめた記事はこちら★
国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介

次回:古文(第2回)「格助詞『が』『を』『に』」

Youtube版も見て下さいね!

助詞・敬語を覚えて主語がとれるようになるには

結構時間がかかります(私自身は3か月)。

しかし、

私の授業を受けた生徒さんは

たった2日


で覚えます(というか、私が叩き込みます)。

その授業の動画版ができました。

本当に古文ができるようになる初めの一歩を踏み出したい方
定期試験で点を取りたい方

1日1回ノートを取りながら動画で勉強すれば、

2日で完成します(全力でやれば1日で!お勧めしませんが)

この動画を見ましょう。

1.主語が変わる所は決まっている。格助詞「を」「に」接続助詞「ば」「を」「に」

格助詞「を」「に」接続助詞「ば」「を」「に」(「が」)

古文では主語を省略して書かれていることが多く、主語がとつぜん変わっているように見えますが、どこで主語が変わるのかは決まっています

格助詞「を」「に」と、接続助詞「ば」「を」「に」(「が」)で主語が変わる可能性がある

他にも変わる箇所はありますが、これだけでも十分実用的なので、とりあえず、今はこのように覚えましょう。

これら以外の場所では主語が変わらないのです。

よく間違われるので補足します。「を」「に」、「ば」「を」「に」(「が」)で主語が変わる可能性があるだけで、必ず主語が変わるわけではありません。これらの個所で主語が変わったり、変わらなかったりします

格助詞「を」「に」で主語を補ってみよう

格助詞「を」「に」は特に覚えることはないです。そのまま「を」「に」と訳しましょう。詳しくは第2回「格助詞『が』『を』『に』」でやっていきます。

問題「主語を補って読みましょう」

①貸した本を無くしてしまった。
②ここ掘れワンワンと示したところに鍬(くわ)を入れると大判小判がざっくざく~
③御車に奉るところに掛物を持って奉りて、ヒント(掛物(かけもの 景品)

正解
「(A君)が貸した本を(B君)が無くした」
②「(犬が)掘れワンワンと示したところに(おじいさんが)鍬を入れると大判小判がざっくざく~
(偉い人が)車にお乗りになる所に(偉くない人が)景品をもって差し上げて、」

③は難しいですね。格助詞「を」「に」が3つも入っていますし、敬語の知識も必要です。

とりあえず今は格助詞「を」「に」でいきなり主語が変わる可能性があるということだけ覚えましょう。細かい説明は第2回「格助詞『が』『を』『に』」でやる予定です。

★格助詞をまとめた記事はこちら★
古文(第2回)「格助詞『が』『を』『に』」

接続助詞「ば」「を」「に」(「が」)で主語を補ってみよう

古文では接続詞、逆接「しかし」、順接「したがって」、単純接続「~して」などを使いません。その代わりに、接続助詞「ば」「を」「に」(「が」)で済ませます。

接続助詞は後ろに読点「、」がつき、文と文をつなぐ働きをしていることです。

未然形+「ば」順接仮定条件「もし~したならば」。重要
已然形+「ば」順接確定条件「(実際に)~したので」。重要
「を」順接、逆接、単純接続のどれかが入る。重要
「に」順接、逆接、単純接続のどれかが入る。重要
が」逆接のみで現代語と同じ。間違えることもないので重要ではない。平安後期以降の用法

問題「主語を補って読みましょう」

①呼ばば、来る。
②呼べば、来る。
③見まほしきに、誰かは物語もとめ見する人のあらむ。

正解
①もし(私が)呼んだとしたら(B君は)来てくれるだろう。(順接仮定条件)
②(私が)呼んだので、(B君は)来た。(順接確定条件)
③(私は物語を)読みたいけれど、(物語をあつめて見せてくれる人)がいるだろうかいやいない。(逆接)

①は仮定の話②は実際やった(確定)の話です。ともに「ば」の前後で主語が変わっています

③は難しいです。「に」の前後で主語が変わっています。接続助詞「を」「に」にはすべての接続詞が入る可能性があるので、文脈判断です。「見る」「見せる」の述語動詞で見分けましょう。

とりあえず今は接続助詞「ば」「を」「に」(「が」)で主語が変わる可能性があるということだけ覚えましょう。細かい説明は第3回「接続助詞『ば』『を』『に』」でやる予定です。

まずは接続助詞「ば」「を」「に」だけでいいので、、マークをつけて前の文と後ろ文で主語が変わっているのかいないのかを確認するようにしましょう。

★格助詞をまとめた記事はこちら★
古文(第3回)「接続助詞『ば』『を』『に』」

参考書の紹介

基礎を固めるには

マドンナ古文(荻野文子先生)
マドンナ古文単語230(荻野文子先生)
マドンナ古文常識217(荻野文子先生)
マドンナ古文単語230れんしゅう帖(荻野文子先生)

さらに上を目指す人や、古文ができる人は

古文上達(Z会出版 小泉貴先生)
読み解き古文単語(Z会出版 横屋芳明先生)

旧帝大を目指す人(私立にはかなり不向き)は

最強の古文(Z会出版 小泉貴先生)

ラインナップを見ればわかりますが、古文に関しては、私はマドンナ(荻野文子先生)の信者です。

マドンナ古文単語230れんしゅう帖だけはあまり売れていないですが、私はこれで力をつけたので、指導でよく使っています。

使い方を間違えなければ、かなりの良書だと思っています。

この章のまとめ
格助詞「を」「に」と、接続助詞「ば」「を」「に」(「が」)で主語が変わる可能性がある
・これら以外の場所では主語が変わらない。
・格助詞「を」「に」は、そのまま「を」「に」と訳そう。
・接続助詞「を」「に」は、「しかし」「したがって」「~して」のどれか1つ。
・未然形+「ば」順接仮定条件」、已然形+「ば」順接確定条件

2.敬語で主語を特定する。

主語を特定するためだけの敬語解説

敬語には尊敬語、謙譲語、丁寧語があります。

敬語の説明の仕方はいろいろありますが、今回は主語を特定することだけを念頭に説明します。

尊敬語(お~なる、お~なさる)は、偉い人が何かしたときに使う。主語は偉い人
謙譲語~し申し上げる)は、偉くない人が偉い人に何かしたとき、主語は偉くない人。
敬語無し 偉くない人が何かをしたとき、主語は偉くない人。
敬語無し いままで尊敬語を使っていたのに、とつぜん省くとき、主語は偉い人(例外)
丁寧語(~です、~ます、~ございます)。主語は偉い人、偉くない人のどちらか。

とりあえず、これを知っておけばたいていの古文の主語は補えます。まず、これを覚えましょう。

偉い人が複数いる場合の敬語

上の表は2人以上偉い人がいた場合は例外です。

他の偉い人」に対して「もう一人の偉い人」が謙譲語を使います

もちろん偉い人には尊敬語をつけるので、その時の形は

「~謙尊、」「~謙尊。」謙譲語と尊敬語を同時に使います。

お互いに「~謙尊、」「~謙尊。」で書かれているので、どっちがやったのか分かりにくくなります。古文の中でも平安時代のものが難しいのは、偉い人が複数出てくることが多いからです。

例えば、藤原道長とその娘の中宮彰子(天皇の正式なお嫁さん)のやりとりがかかれている大鏡、栄花物語、紫式部日記がそうです。

文脈で主語を補うしかないので、前の章で述べた格助詞「を」「に」接続助詞「ば」「を」「に」で主語が変わるかもしれないということを念頭に置いて主語を補いましょう。

ちなみに、道長と彰子では、

彰子のほうが圧倒的に偉い

ので、現在の親子関係という価値観で考えると、主語を取り違えてします。

古文常識は文脈補うのに大きな力になります。

マドンナ古文常識217(荻野文子先生)が、かなりおすすめです。

この章をまとめ
尊敬語は主語が偉い人。
・謙譲語は主語が偉くない人
敬語無しは主語が偉くない人。
丁寧語は主語が偉い人か、偉くない人(文脈判断しよう)。
偉い人が複数のときは「~謙尊」の形になる(文脈判断しよう)。
古文常識は文脈補うのに大きな力になる。

3.尊敬の助動詞「る」「らる」「す」「さす」も、たまには思い出しましょう。

「る」と「らる」、「す」と「さす」の違いはア段かそれ以外か

「る」「らる」の意味は、受け身、尊敬、自発、可能。
②「す」「さす」の意味は、使役、尊敬

分からなかった人は今覚えましょう。

「る」「す」の接続(直前の形)は、四段、ナ変、ラ変の未然形。
「らる」「さす」の接続は、四段、ナ変、ラ変以外の未然形。

一見難しそうですが、この接続の意味するものはとても簡単です。

「ア行」か「それ以外か」ということです。

四段、ナ変、ラ変動詞や(この活用の助動詞)の未然形は「ア段」ですが、それ以外の動詞、形容詞、形容動詞、助動詞の未然形ア段」ではありません。

上が「ア段」ならば、そのまま「る」「す」を置く。
上が「ア段以外」ならば、自分で「ア行」を補って、「らる」「さす」になるだけです。

助動詞「る」「らる」で主語を補おう

「る」「らる」は文法がらみで出題されます(特に「る」)

問題「主語を補って読みましょう」。

かの大納言(藤原公任)、いずれの船にか乗らるべき。
②「犬島につかわせ、ただ今」とおほせらるれば、
③手紙を読み給へる時、

正解

①大納言は、どの船にお乗りになられるのだろうか(尊敬)
②(とても偉い人が)「今すぐ犬島に派遣しろ」とおっしゃられたので、(尊敬)
③(偉い人が)手紙をお読みになった時、(完了)

「乗る」は四段活用なので、そのまま「る」置きます。藤原公任は古文では重要人物です。
②「おほす」は下二段活用の尊敬語です、上がア段ではないので「らる」になります。ちなみに2重尊敬語(尊尊)を使っているので、主語はとても偉い人です。
はかなり難しいです文法的に説明できるならば古文がかなりできる人です。

③問題を解くためには2つの文法知識が必要です。

「給ふ」は尊敬と謙譲の両方があり活用の仕方が違う
る」「れ」には2つの助動詞の可能性があり、識別しなければならない。

今はわからなくても大丈夫です。

とりあえず、

主語を特定するには文法と敬語が必要

ということだけは覚えておいてください。

詳しくは、第4回「敬語、給ふ、参る、奉る」第5回「識別①、5つ識別」でやる予定です。

必ずできるようになります

助動詞「す」「さす」で主語を補おう

「す」「さす」使役尊敬の意味があります。

「す」「さす」尊敬で使うときは、「~せ給ふ」、「~させ給ふ」というように2重尊敬「尊敬尊敬」で使われ。主語はとても偉い人です。

「す」「さす」には使役の意味もあります。「~せ給ふ」、「~させ給ふ」は「~させなさる」「使役尊敬」の場合もあります。

問題「主語を補って読みましょう」

本を読ませ給ふ。(ヒント「給ふ」は尊敬語)

正解

①(偉い人が)本をお読みになる。(二重尊敬)尊敬尊敬
②(偉い人が偉くない人に)本を読ませなさる。使役尊敬

の2つの可能性があり、文脈判断になります。

①では本を読んだのは偉い人です。
②では本を読んだのは偉くない人です。

①と②では本を読んだ人が異なるのです。

このように文法的な知識も主語を補うのに必要なのです意外と忘れがちなので、頭に入れておきましょう。

この章のまとめ
上がア行なら「る」「す」、ア行以外なら「らる」「さす」
「る」は文法がらみでよく出題される。
「~せ給ふ」「~させ給ふ」は二重尊敬「尊敬尊敬」と「使役尊敬」の可能性がある。・

「いくら勉強しても国語が出来るようにならない」生徒さんのための「国語のオンライン個別授業」開講

国語のオンライン個別指導が始まりました。
国語ができなくて受験前から諦めかけているご家庭のためのサービスです。遠方のご家族から寄せられたご要望により開講いたしました。

★現代文、古文、英語の勉強法をまとめた記事はこちら★
国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介

次回:古文(第2回)「格助詞『が』『を』『に』」

以上で第1回「古文の主語が取れない3つの要因」は終わりです。

ご精読ありがとうございました。

今回は基本的で根源的な点について触れました。次回からは、もっと詳しく解説していきたいと思います。

第2回は「格助詞『が』『を』『に』」にする予定です。よろしければ、次回も読んでいただけるとありがたいです。

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