国語の解き方や勉強法、参考書や問題集の紹介(第15回)「体言・連体形接続『ごとし・なり・たり』と「サ変未然・四段已然(さみしい)」接続の助動詞『り』
みなさんはじめまして。
七隈国英塾の杉久保英司と申します。当ホームページをご覧いただきありがとうございます。
今回は(第15回)「体言・連体形接続『ごとし・なり・たり』と「サ変未然・四段已然(さみしい)」接続の助動詞『り』を解説していきます。
助動詞は「掛け算九九」みたいなものです。
九九ができなければ分数の足し算・掛け算が出来ないのと同様に、
助動詞が分からなければ古文はわかるようになりません。
助動詞のあと少しです。
「サ変未然・四段已然(さみしい)」接続の助動詞『り』は
「る・れ」の識別で使いますので、ちゃんと理解しましょう。
いわゆる「差がつく単元」なので、
ここをしっかり押さえて古文を得点源にしましょう。
それでは、今回の要点を2行でまとめます。
①まずは「接続」を覚えよう
②「サ変未然・四段已然(さみしい)」接続→「e段」
⓷「体言・連体形接続『ごとし・なり・たり』と「サ変未然・四段已然(さみしい)」接続の助動詞『り』の「意味」と「解説」
助動詞の接続
未然形接続「る・らる・す・さす・しむ / ず・じ・む・むず・まし・まほし」
連用形接続「き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし」
終止・ラ体「べし・まじ・らむ・めり・らし・なり」
体言・連体「ごとし・なり・たり」←今回はココ
サ未・四已「り」←今回はココ
(さみしい・サ変未然/四段已然)
国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介
「現代文」「古文」「英語」のまとめリンクになっています。
第1回に参考書・問題集の紹介を行っております。
できるだけ分かりやすく伝えることで、皆さんの成長のきっかけとなれば良いなあと思っています。
★現代文、古文、英語の勉強法をまとめた記事はこちら★
国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介
前回:(第13回)「終止形・ラ変の連体形接続の助動詞『べし・まじ・らむ・めり・らし・なり』」
次回:古文(第15回)「係助詞。結びの消滅と省略」
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1.まずは「接続」を覚えよう
接続とは?
「上が何形か」ということです。
例を挙げます。
助動詞「まほし(~したい・願望)」の接続は未然形で、
助動詞「たし(~したい・願望)」の接続は連用形です。
助動詞「まほし」「たし」は
意味は「願望・~したい」で同じですが、
接続(上の形)が違います。
つまり
「まほし」の上が未然形で、
「たし」の上が連用形になります。
例文
呼ばまほし。
呼びたし。
となります。
呼ぶ(四段動詞) | |
未然(ず) | 呼ば |
連用(て) | 呼び |
終止(。) | 呼ぶ |
連体(とき) | 呼ぶ |
已然(ど) | 呼べ |
命令 | 呼べ |
「ず」「て」「。」「とき」「ど」「命令」で活用させよう
「ず」「て」「。」「とき」「ど」「命令」
をつけて活用させましょう。
走る(四段) | 流る(下二) | 老ゆ(上二) | 射る(上一) | |
未然(ず) | 走ら | 流れ | 老い | い |
連用(て) | 走り | 流れ | 老い | い |
終止(。) | 走る | 流る | 老ゆ | いる |
連体(とき) | 走る | 流るる | 老ゆる | いる |
已然(ど) | 走れ | 流るれ | 老ゆれ | いれ |
命令 | 走れ | 流れよ | 老いよ | いよ |
1語1語覚えるのではなく、全ての助動詞の「接続」→「意味」→「活用」の順で覚えよう
助動詞の1つ1つの「接続」「意味」「活用」を覚えるのは大変で非効率的です。
例えば
助動詞「まじ」
接続「終止形・ラ変の連体形接続」
意味「打消し推量・打消し意志・不可能・禁止・不適当」(「」)
活用「下の表」
べし(主活用) | ず(副活用)下が助詞・助動詞の時 | |
未然 | まじく | まじから |
連用 | まじく | まじかり |
終止 | まじ | ○ |
連体 | まじき | まじかる |
已然 | まじけれ | ○ |
命令 | ○ | ○ |
これを27個もある助動詞で繰り返すのは無理です。
私もこのやり方で失敗しました。
1つの助動詞の「接続」「意味」「活用」を全て覚えて
これを27個分繰り返すのではなく。
まず、全ての助動詞の「接続」を覚えて、
次に、全ての助動詞の「意味」を覚えて、
最後に、全ての助動詞の「活用」覚えるのです。
まずは「接続」を覚えましょう
助動詞の接続
未然形接続「る・らる・す・さす・しむ / ず・じ・む・むず・まし・まほし」
連用形接続「き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし」
終止・ラ体「べし・まじ・らむ・めり・らし・なり」
体言・連体「ごとし・なり・たり」
サ未・四已「り」
(さみしい・サ変未然/四段已然)
200人以上の高校生・中学生に古文を教えてきましたが、
驚くことに
95%の生徒さんはこれを知りません。
皆さんなんとなく古文を解いています。
私の古文の最初の授業はこれを覚えてもらいます。
「九九」が出来なければ、「分数の計算」ができないのと同様に、
「助動詞」が出来なければ、「古文」はできるようにならないからです。
だから、高校1年生で1年間かけて助動詞の学習をするのです。
助動詞の「接続」を覚えるだけで、
平均で45分
遅い生徒さんで1時間30分かかります。
最速で中学2年生の25分です。
声を出して音声で「耳」に覚えさせましょう(超重要)
よく忘れるので、身につくまで何回も繰り返しましょう。
ここを突破できなければ、古文学習の先はありません(マジでどうしようもないかも)
逆に言えば、
ここさへ突破できれば
「古文学習」の門が開く!
のです。
45分かけて
声に出しながら
これだけに集中しましょう。
助動詞の接続(これだけに集中すれば、45分で1度は完ぺきにできる)
未然形接続「る・らる・す・さす・しむ / ず・じ・む・むず・まし・まほし」
連用形接続「き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし」
終止・ラ体「べし・まじ・らむ・めり・らし・なり」
(ラ体=ラ変連体形)
体言・連体「ごとし・なり・たり」
サ未・四已「り」
(さみしい・サ変未然/四段已然)
2.「サ変未然・四段已然(さみしい)」接続→「e段」
す(サ変) | 走る(四段) | |
未然(ず) | せ(e段) | ら |
連用(て) | し | り |
終止(。) | す | る |
連体(とき) | する | る |
已然(ど) | すれ | れ(e段) |
命令 | せよ | れ |
「サ変未然・四段已然(さみしい)」の意味が分からない生徒さんは多いです。
結論を言うと、
「サ変未然・四段已然(さみしい)」=「e段の下につく」
ということです。
①「サ未四已然(さみしい)の『り』は完了の『り』」
②「e段につく『り』は、完了の『り』」
で覚えましょう。この形で覚えておくと困ることはなくなるでしょう。
問題1.「傍線と同じ意味の「る」を1つだけ選びましょう」
例文「不死の薬の入れる壺」
①小さな魚が大きな魚に食はる。
②~と思はる。
③先生が職員室におらる。
④~を知り給へる時、
⑤この牛乳賞味期限が過ぎてるけど、飲まるや?
ヒント
①「る」の接続を見よう。
②「e段につく『り』は、完了の『り』」
③例文は「入れる」で「e段」
④文脈は考えなくてよい。
⑤実は2秒で解けます。
正解
④~を知り給へる時、「~を知りなさった時」(完了)
解説
例文「不死の薬の入れる壺」
①小さな魚が大きな魚に食はる。(受け身)
②~と思はる。(自発)
③先生が職員室におらる。(尊敬)
④~を知り給へる時、(完了)
⑤この牛乳賞味期限が過ぎてるけど、飲まるや?(可能)
接続を見て、
「e段」なら完了の「り」
「e段以外」なら「受け身・可能・自発・尊敬(受可自尊・じゅかじそん)」の「る」
補足
「給ふ」の識別。(超重要)
給ふ は ひ ふ ふ へ へ
(尊敬なら四段活用する)
給ふ へ へ × ふる ふれ へよ
(謙譲なら下二段活用する)
④~を知り給へる時、「~を知りなさった時」(完了)
今回の「給ふ」の「尊敬・謙譲」の識別方法
・「る」の接続が「e段」だと分かるので、「る」は完了の「り」。
・完了「り」の接続は「サ変未然・四段已然(さみしい)」
・「給ふ」は明らかに「サ変」ではないので、「四段」になる。
・四段活用する「給ふ」は尊敬の「給ふ」
①「サ未四已然(さみしい)の『り』は完了の『り』」
②「e段につく『り』は、完了の『り』」
必ずこの形で覚えよう!
もし、「給ふ」の識別を知らなかった人・もっと詳しく知りたい人は、
こちらかどうぞ。
★敬語をまとめた記事はこちら★
(第4回)「尊敬語・謙譲語?敬語『給ふ』『参る』『奉る』の識別」
3.終止形・ラ変の連体形接続の「意味」と「解説」
今回は「体言・連体形接続『ごとし・なり・たり』と「サ変未然・四段已然(さみしい)」接続の助動詞『り』を解説していきます。
「解説」とは
実際の試験問題を想定して、
「知っておくと得点になるポイント」
を解説するものです。
ごとし
意味
比況(~の状況のようだ)
例示(例をあげてたとえる)
例文
翔ぶがごとく。
お相撲さんは、山のごとし。
解説
受験で一番出題頻度が少ないことで有名。
なり
意味
断定(~だ。~である。)
解説
断定の助動詞「なり」と伝聞推定の助動詞「なり」の識別が最重要。
断定「なり」→連体形・体言に接続
伝聞推定「なり」→終止形・ラ変の連体形接続
問題
2つの「なり」を識別しよう。
男もすなる日記というものを
女もしてみんとてするなり。
ヒント
未然 連用 終止 連体 已然 命令
せ し す する すれ せよ
解答
男もすなる日記というものを
女もしてみんとてするなり。
男がするという噂の日記というものを
女もしてみようとしてするのだ。
解説2
「なり」の上が「四段」「ラ変」の場合、接続による識別ができない。頑張って文脈判断しよう。
たり
意味
「断定(~だ。~である。)」
解説
連用形接続の「完了・存続」の「たり」との識別はでません。
り
意味
「完了(~た)」
「存続(~している)」
解説
「る・れ」の識別が超重要。上が「e段」なら完了の助動詞「り」。「a段」なら受可自尊(じゅかじそん)の助動詞「る」。接続で100%識別可能。
先生が走れる「先生が走った(完了)」
先生が走らる「先生がお走りになる(尊敬)
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第1回に参考書・問題集の紹介を行っております。
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(第10回)「主語が変わる助詞『を、に、ば、ば、ども、が、とも、を、に(鬼婆どもが友鬼)』変わらない助詞『て、で、して、つつ、ながら』」
「接続助詞で主語が変わる」
「格助詞『を』『に』でも主語が変わる」
古文は主語を取り違えないことが超重要です。
興味のある方はぜひこちらから。
(第5回)「識別①『ぬ・ね』『る・れ』『なり』」
「識別」初心者や「識別」という言葉や概念を知らなかった人は、まず、こちらから始めるのをお勧めします。
この辺の識別が理解できると、古文の参考書の解説が理解できるようになって、古文は楽しくなってきます。
(第4回)「敬語『給ふ』『参る』『奉る』」
「敬語」は「主語を補う」のにとても大事です。
「給ふ」が理解できれば、「敬語の8割を理解した」も同然だと思います。
今回の内容を整理して「主語を補える」ようになりましょう。
(第13回)「エピソードとゴロで覚える頻出『古文文学史』一覧」
「文学史の知識があれば、読解がはかどる!」
文学史で加点できるだけでなく、初見の文章でも、出典の概要を知っておけば「大きな読み違え」は無くなります。
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前回:(第13回)「終止形・ラ変の連体形接続の助動詞『べし・まじ・らむ・めり・らし・なり』」
次回:古文(第16回)「係助詞。結びの消滅と省略」
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以上で、第14回「体言・連体形接続『ごとし・なり・たり』と「サ変未然・四段已然(さみしい)」接続の助動詞『り』は終わりです。
ご精読ありがとうございました。
今回取り扱った助動詞は、基本中の基本です。
次回は第15回は「係助詞。結びの消滅と省略」です。よろしければ、次回も読んでいただけるとありがたいです。