国語の解き方や勉強法、参考書や問題集の紹介(第11回)「未然形接続の助動詞『る・らる・す・さす・しむ・ず・じ・む・むず・まし・まほし』」

みなさんはじめまして。

七隈国英塾の杉久保英司と申します。当ホームページをご覧いただきありがとうございます。

今回は(第11回)「未然形接続の助動詞『る・らる・す・さす・しむ・ず・じ・む・むず・まし・まほし』」を解説していきます。

助動詞は「掛け算九九」みたいなものです。
九九ができなければ分数の足し算・掛け算が出来ないのと同様に、
助動詞が分からなければ古文はわかるようになりません

それでは、今回の要点を2行でまとめます。

①まずは「接続」を覚えよう
②未然形接続の「意味」と「解説」

助動詞の接続

未然形接続「る・らる・す・さす・しむ / ず・じ・む・むず・まし・まほし←今回はココ

連用形接続「き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし」

終止・ラ体「べし・まじ・らむ・めり・らし・なり」

体言・連体「ごとし・なり・たり」

サ未・四已「り」

(さみしい・サ変未然/四段已然)


目次

国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介

「現代文」「古文」「英語」のまとめリンクになっています
第1回に参考書・問題集の紹介を行っております。
できるだけ分かりやすく伝えることで、皆さんの成長のきっかけとなれば良いなあと思っています。

★現代文、古文、英語の勉強法をまとめた記事はこちら★
国語、英語の読み方、解き方、勉強法や参考書、問題集の紹介

前回:古文(10回)「主語が変わる助詞『を、に、ば、ば、ども、が、とも、を、に(鬼婆どもが友鬼)』変わらない助詞『て、で、して、つつ、ながら』」

次回:古文(第12回)「連用形接続の助動詞『き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし」

この記事はこんな人が書いています

「いくら勉強しても国語が出来るようにならない」生徒さんのための「国語のオンライン個別授業」開講

国語のオンライン個別指導が始まりました。
国語ができなくて受験前から諦めかけているご家庭のためのサービスです。遠方のご家族から寄せられたご要望により開講いたしました。

1.まずは「接続」を覚えよう

接続とは?

「上が何形か」ということです。

例を挙げます。
助動詞「まほし(~したい・願望)」の接続は未然形で、
助動詞「たし(~したい・願望)」の接続は連用形です。

助動詞「まほし」「たし」は
意味は「願望・~したい」で同じですが、
接続(上の形)が違います

つまり
まほし」の上が未然形で、
たし」の上が連用形になります。

例文
呼ばまほし。
呼びたし。
となります。

呼ぶ(四段動詞)
未然(ず)呼ば
連用(て)呼び
終止(。)呼ぶ
連体(とき)呼ぶ
已然(ど)呼べ
命令呼べ

「ず」「て」「。」「とき」「ど」「命令」で活用させよう

「ず」「て」「。」「とき」「ど」「命令」

をつけて活用させましょう。

走る(四段)流る(下二)老ゆ(上二)射る(上一)
未然(ず)走ら流れ老い
連用(て)走り流れ老い
終止(。)走る流る老ゆいる
連体(とき)走る流るる老ゆるいる
已然(ど)走れ流るれ老ゆれいれ
命令走れ流れよ老いよいよ

1語1語覚えるのではなく、全ての助動詞の「接続」→「意味」→「活用」の順で覚えよう

助動詞の1つ1つの「接続」「意味」「活用」を覚えるのは大変で非効率的です。


例えば
助動詞「べし」

接続「終止形・ラ変の連体形接続」
意味「推量・意志・可能・当然・命令・適当」(「スイカ止めて!」で覚えよう)
活用「下の表」

べし(主活用)ず(副活用)下が助詞・助動詞の時
未然べくべから
連用べくべかり
終止べし
連体べきべかる
已然べけれ
命令
「べし」の活用

これを27個もある助動詞で繰り返すのは無理です。
私もこのやり方で失敗しました。


1つの助動詞の「接続」「意味」「活用」を全て覚えて
これを27個分繰り返すのではなく。

まず、全ての助動詞の「接続」を覚えて
次に、全ての助動詞の「意味」を覚えて
最後に、全ての助動詞の「活用」覚えるのです。

まずは「接続」を覚えましょう

助動詞の接続

未然形接続「る・らる・す・さす・しむ / ず・じ・む・むず・まし・まほし」

連用形接続「き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし」

終止・ラ体「べし・まじ・らむ・めり・らし・なり」

体言・連体「ごとし・なり・たり」

サ未・四已「り」

(さみしい・サ変未然/四段已然)

200人以上の高校生・中学生に古文を教えてきましたが、
驚くことに
95%の生徒さんはこれを知りません
皆さんなんとなく古文を解いています。

私の古文の最初の授業はこれを覚えてもらいます。
「九九」が出来なければ、「分数の計算」ができないのと同様に、
「助動詞」が出来なければ、「古文」はできるようにならないからです
だから、高校1年生で1年間かけて助動詞の学習をするのです。

助動詞の「接続」を覚えるだけで、
平均で45分
遅い生徒さんで1時間30分かかります。
最速で中学2年生の25分です。

声を出して音声で「耳」に覚えさせましょう(超重要)

よく忘れるので、身につくまで何回も繰り返しましょう

ここを突破できなければ、古文学習の先はありません(マジでどうしようもないかも)

逆に言えば、
ここさへ突破できれば

「古文学習」の門が開く!

のです。

45分かけて
声に出しながら
これだけに集中しましょう。

助動詞の接続(これだけに集中すれば、45分で1度は完ぺきにできる)

未然形接続「る・らる・す・さす・しむ / ず・じ・む・むず・まし・まほし」

連用形接続「き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし」

終止・ラ体「べし・まじ・らむ・めり・らし・なり」
(ラ体=ラ変連体形)

体言・連体「ごとし・なり・たり」

サ未・四已「り」

(さみしい・サ変未然/四段已然)

2.未然形接続の「意味」と「解説」

今回は「未然形接続の助動詞」
「る」「らる」「す」「さす」「しむ」
「ず」「じ」「む」「むず」「まし」「まほし」

だけの「意味」と「解説」です。

解説」とは
実際の試験問題を想定して、
知っておくと得点になるポイント
を解説するものです。

る・らる

意味
「受け身・可能・自発・尊敬」
じゅかじそん」と声に出して覚えよう。
解説
現代語にも残っていて、「受可自尊」は文脈判断
「る」と「らる」の違いは、上が「a段」なら「
上が「a段以外」なら「らる」になる。
走ら・死な・はべら
流れらる・老いらる。射らる
解説2
「る・れ」の識別が超重要。上が「e段」なら完了の助動詞「り」。「a段」なら受可自尊(じゅかじそん)の助動詞「る」。接続で100%識別可能。
先生が走れる「先生が走った(完了)」
先生が走らる「先生がお走りになる(尊敬

す・さす・しむ

意味
「使役(~させる)「尊敬(~なさる)」」
解説
「~せ給ふ」「~させ給ふ」の識別が超重要。「二重尊敬(尊敬+尊敬)(~なさる)と「使役+尊敬(~させなさる)」の2択で文脈判断
本を読ませ給ふ
本をお読みになった(二重尊敬
本を読ませなさった(使役+尊敬
「二重尊敬」では本を読んだのは偉い人
「使役+尊敬」では本を読んだのは下の者
主語の特定が古文では重要になる。
解説2
上が「a段」なら「
上が「a段以外」なら「さす」になる。
「す・さす」と「しむ」の使い分けは受験生は気にしなくてよい。

意味
「打消(~ない)」
解説
活用形が特殊型。とにかくよく使うので、活用は絶対覚えよう。「ず・ず・ず・ぬ・ね」と教える先生と、「ず・ざら・ず・ざり・ず」と教える先生が50:50の割合でいる模様。学校で習った方法で活用を覚えよう。
解説2
「ぬ・ね」の識別が超重要未然形接続なら「打消し」の助動詞「」。連用形接続なら「完了」の助動詞「」。
立たぬ扇風機。「風が吹かない扇風機(打消)」
立ちぬ。「風が吹い完了)」
風や立たぬ。「風が吹かない(打消
解説3
水流れ。「水が流れない?水が流れた?」
流れ流れ・流る・流るる・流るれ・流れろ」のように、未然形と連用形が同形のとき活用を覚えていないと分からなくなる。なので、活用は絶対覚えよう。「水流れぬ」の「ぬ」の後ろが「。」なので「ぬ」は終止形終止形が「ぬ」なのは「完了」の助動詞「ぬ」(な・に・・ぬる・ぬれ・ね)。
水流れぬ。「水が流れた(完了)」

意味
「打消し推量(~ないだろう)」「打消し意志(~したくない)」
解説
「じ」=「notむ」と覚えよう。「じ」は「む」の打消し。「む」の出現頻度の低い意味が消えたものが「じ」と言える。(「出現頻度に関しては「む」で後述します)

む・むず

意味
ス 推量(~だろう)
イ 意志(~しよう)
カ 可能(~できる)
止 当然(~しなければならない)
め 命令(~しろ)
て 適当(したほうが良い
婉曲(~のような)
「スイカ止めて+婉曲」で覚えよう。「婉曲」とは「回りくどい表現」のこと「~ような」と訳す。
・「あなたのことが好きだー」(ド直球)
・「あなたのようなが好きよ」(婉曲
「む」「むず」の下に「体言(=名詞)」がくると婉曲になる。
解説
出現頻度は「婉曲」が50%、「推量・意志」が40%、「可能・当然・命令・適当」が10%。とにかく「む」の下に体言が付くことが多く、婉曲の「む」はめちゃくちゃ多い。これを知っておくと、無駄な識別をしなくても済む。

まし

意味
「反実仮想(もし~ならば、~だろう)」。「反実仮想」は、英文法の「仮定法」まったくと同じ。「事実とは反する~という仮定をしたならば、~という結論に至るだろう」という意味になる。
解説
「~ば、~まし
「~ば、~まし
「~ませば、~まし
「~ましかば、~まし
の4つの型を覚えよう。
解説2
「~ば、~まし」の「」の品詞と意味をすぐに言える人は相当古文が出来る人。みんなも考えてみよう。(答えは後述します)







答え
過去」の助動詞「」の未然形。
・○・き・し・しか・○)
「~ば、~まし」は「あの時~していたら、~だっただろう」という「事実とは反する過去の仮定、過去の結論」の文になる。英語で言えば「仮定法過去完了」(時制は過去)と全く同じ。よくわからない人は英語も勉強しよう。

まほし

意味
「願望(~したい)」
解説
まほし」と「たし」の識別は接続しか問われない。
未然形+「まほし
連用形+「たし
男子かくあらまほし。
男子かくありたし。
「あり(ラ行変格活用)」
・り・る・れ・れ)

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 この辺の識別が理解できると、古文の参考書の解説が理解できるようになって、古文は楽しくなってきます。

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「敬語」は「主語を補う」のにとても大事です
「給ふ」が理解できれば、「敬語の8割を理解した」も同然だと思います。
今回の内容を整理して「主語を補える」ようになりましょう。

(第13回)「エピソードとゴロで覚える頻出『古文文学史』一覧」

「文学史の知識があれば、読解がはかどる!」
文学史で加点できるだけでなく、初見の文章でも、出典の概要を知っておけば「大きな読み違え」は無くなります
興味のある方はぜひこちらから。

前回:古文(10回)「主語が変わる助詞『を、に、ば、ば、ども、が、とも、を、に(鬼婆どもが友鬼)』変わらない助詞『て、で、して、つつ、ながら』」

次回:古文(第12回)「連用形接続の助動詞『き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし」

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以上で、第11回「未然形接続の助動詞『る・らる・す・さす・しむ・ず・じ・む・むず・まし・まほし』」は終わりです。

ご精読ありがとうございました。

今回取り扱った助動詞は、基本中の基本です

次回は第12回「連用形接続の助動詞『き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし」にする予定ですので、よろしければ、次回も読んでいただけるとありがたいです。

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